本研究は,早期定着,長期維持を目指した骨親和性のある新規ジルコニアインプラントの開発を目指し,密着性,均一性に優れた分子プレカーサー法によるアパタイト薄膜コーティングを用いた表面改質について,基材の種類や表面前処理の条件について検討した. イットリア安定型正方晶部分安定化ジルコニア(Y-TZP)に分子プレカーサー法によって炭酸含有アパタイト(CA)薄膜コーティングを施し,スクラッチ試験により密着性を評価した.結果,チタン上に形成させたCAに比較し,Y-TZP基板上のCAが強固に接着していることが分かった.また,焼成条件を600度2時間,800度2時間,1000度2時間,600度4時間の各4条件でCA形成させ,顕微鏡による観察,X線回折法による結晶性の測定,PBSへの長期浸漬およびスクラッチ試験による膜の密着性,擬似体液浸漬による骨親和性を測定した結果,800度2時間焼成して得られたCAが高い結晶性を示し,多くの新生骨形成を促す可能性が示唆された. セリア安定型正方晶部分安定化ジルコニア(Ce-TZP)の試料上に分子プレカーサー法によるCA薄膜コーティングを試みた結果,顕微鏡学的観察によってY-TZP上に形成させたCA薄膜とアパタイトの結晶形態が類似していることが分かった. 表面前処理として,Y-TZPに対してナノ秒パルスのYVO4レーザを照射し表面改質を試みた.適切な条件で走査させることによって,深さ30 μm,幅30 μmの骨芽細胞の大きさに合わせた凹凸構造が製作可能であることが明らかになった.これら凹凸微細構造を有したY-TZPをラット大腿骨に4週間インプラント埋入した.レーザ照射Y-TZPインプラントは,未処理表面と比較して高いインプラント-骨接触率を獲得した. 以上の成果は,各関連学会の学術講演で複数発表を行い,さらに機関雑誌に論文が掲載された.
|