骨再生誘導をポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルムを用いて行う場合、アルゴンイオンボンバードメント処理によって、通常のPVDCフィルムと比較し、骨伝導能が増強されることが報告されているが、組織工学の観点から、細胞移植を併用することで、骨再生および異所性骨誘導が可能になると考えられる。そこで、アルゴンイオンボンバードメント処理を施したPVDCフィルム(Ar-PVDC)フィルムと細胞を併用して、骨欠損の治癒促進が得られるかどうかを検討した。 サブコンフルエントのKUSA細胞をスクラッチし、その部分にPVDCフィルムと Ar-PVDCフィルムを貼り付け、細胞の遊走を比較したところ、Ar-PVDCフィルムの方に、早く細胞が移動した。また、PVDCとAr-PVDC上で、KUSA細胞を14日間分化誘導培地にて培養したところ、骨分化マーカーのアルカリフォスファターゼ活性の促進を認めた。アルカリフォスファターゼ染色でも同様に、Ar-PVDCフィルムにおいてより活性を認めた。 一方in vivoにおいて、ラット大腿骨に慢性化した骨欠損を作製し、ラット腓骨細胞をスフェロイド状に移植した後、PVDCフィルムを用いて欠損部を覆った場合、μ-CTを用いた解析において、PVDCとAr-PVDC間に有意な差を認めなかった。 以上より、アルゴンイオンボンバードメント処理ポリ塩化ビニリデンフィルム上での細胞の遊走および分化促進を認めたものの、細胞移植を併用した骨再生誘においては、今後のさらなる検討が必要である。
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