研究課題/領域番号 |
15K20494
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
秦 正樹 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (20632871)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 細胞移植 / 顎骨欠損 / 糖尿病性神経障害 |
研究実績の概要 |
組織再生治療はこれまでに臓器移植や人工物によって治療が行われてきた疾患や、現在の治療法では完治が難しい疾患に対する新しい治療法として注目されている。歯髄幹細胞は主に若年時に採取可能、凍結保存可能という点から有効なツールと考えられ、我々はこれまでに歯髄幹細胞の特異的な機能について解析を行ってきた。本研究では、臨床応用を目指して疾患モデル動物を作製し、細胞移植効果の評価を行う。平成27年度はラットおよびヒトの歯髄組織より歯髄幹細胞の単離培養を行い、フローサイトメトリーを用いて表面マーカーを同定後、脂肪・骨分化誘導を行い多分化能を確認し、下記の成果を得た。 1.歯髄幹細胞を用いた骨組織再生研究 骨欠損に対する組織再生治療において、細胞を欠損部に定着させるために足場材料が用いられ、材料が細胞に与える影響を検討する必要がある。β-TCPとHA上で歯髄幹細胞を培養し、細胞増殖活性を評価したところ、培養2、4、5日後において活性を維持した。ALP活性については培養7日後で活性を維持、14日後で低下を確認した。また、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて培養7日後にβ-TCP、HA上に歯髄幹細胞の存在を確認した。 2.歯髄幹細胞を用いた神経組織再生研究 糖尿病性神経障害に対する組織再生治療では、先行研究として凍結保存したラット歯髄幹細胞を用いて、糖尿病発症モデルラットに移植を行い、坐骨神経伝導速度、坐骨神経内血流量の改善が確認された。また組織学的評価では、von Willebrand factor を用いた毛細血管筋束比とPGP9.5抗体による表皮内神経線維密度の計測を行い、血管数と神経数の増加を確認した。これらの結果の機序として移植細胞の血管内皮細胞への分化、移植細胞のサイトカイン分泌を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の年度計画に対して項目1は、遺伝子解析が若干遅れているが、それ以外の解析は順調に進んでいる。引き続き研究を進める。項目2についてはほぼ予定通り平成27年度計画が達成されており、さらに研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
歯髄組織から単離培養し、同定された歯髄幹細胞を用いて遺伝子解析と動物実験を行う。 骨組織再生研究では、β-TCPとHA上で歯髄幹細胞を培養し、骨形成関連遺伝子の発現を評価する。また、ラット頭蓋骨両側に直径4.6mmの欠損を作製し、ラット歯髄幹細胞とCERASORB (β-TCP)、NEOBONE(HA)の移植を行う。細胞にはPKH26 Red Fluorescent Cell Linker Kitを用いてラベリングを行う。移植8日、16日、24日後の新生骨を3DマイクロX線CTを用いて観察し、骨体積率、骨塩量を計測する。また頭蓋骨移植部位の凍結切片を作製し、HE染色を行い骨形成を確認する。また蛍光顕微鏡を用いて移植細胞の局在を観察する。 神経組織再生研究では、ヌードマウスにストレプトゾトシンを投与し糖尿病状態を惹起させ、ヒト歯髄幹細胞の移植を行う。移植4週、16週後に生理学的検査を行い細胞移植効果の評価を行う。また、細胞移植部位の組織を採取し、切片を作製後HE染色による組織学的評価、血管新生因子や神経成長因子の遺伝子発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初平成27年度に購入予定であったデータ解析、データ保存用パーソナルコンピュータのOSのバージョンアップの可能性があったため購入を次年度に先送りした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にwindows10を搭載したパーソナルコンピュータを購入し、実験で得られたデータの解析はwindows10対応版の統計処理ソフトウェア等を用いて行う。
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