研究課題/領域番号 |
15K20496
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
岡村 友玄 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (10567473)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨補填材 / サンゴ / 足場材料 / 多孔質 / 毛細血管 |
研究実績の概要 |
[多孔性材料が細胞増殖および毛細血管分化能に与える影響の検討]サンゴ、人工焼成骨および軽石といった多孔質材料を足場材料として、37℃、5%CO2条件下で正常ヒトさい帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)と正常皮膚線維芽細胞(NHDF)をVEGF-Aを含有する毛細血管分化培地で共培養し、毛細血管分化培地で培養する。培養24時間後に25mg / wellの各多孔質材料粒子を24穴マルチウェルプレートに添加した。細胞増殖能、毛細血管分化能を比較検討し、培養期間と形成される組織の関係、細胞増殖期、分化期を明らかにした。培養期間は1, 7, 14, 28日とした。細胞増殖能はMTTアッセイを行った。毛細血管分化能は抗ヒトCD31マウスIgGモノクロナール抗体をFITC標識抗マウスIgGヤギ抗体で免疫組織化学染色した毛細血管を観察した。 [サンゴ周囲に形成される毛細血管の構造解析]多孔性材料周囲に形成されたHUVECとNHDFおよび毛細血管を蛍光免疫組織化学手法を用いて断層写真を撮影、これを画像処理して三次元的構造を解析した。各断層写真から得られる毛細血管の幅径を測定した。[多孔質材料表面および孔における細胞のSEMによる微細構造の観察]2.5% Glutaraldehyde‐0.1M Phosphate Bufferで前固定、1%四酸化オスミウムで後固定した後、エタノールで脱水、t-ブチルアルコールで凍結真空乾燥、イオンスパッタリング装置を用いてpt-pdを蒸着し生物試料を作製した。細胞と多孔質材料の接着、多孔構造内部への細胞増殖を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はHUVECとNHDFを共培養し、サンゴを粉砕し直径350-500μmに調整した粒子を三次元培養の足場材料として添加し, 無添加のものを対照群として培養した。三種類の粒子添加後14、21、および28日後にMTTアッセイをWST法で行い生細胞を計測した。毛細血管を抗ヒトCD31マウスIgGモノクロナール抗体を用いて免疫染色し、DAPIで核を染色した。毛細血管の形成は蛍光顕微鏡で観察した。サンゴ粒子表面をアリザリン染色し、培養環境下におけるサンゴ表層カルシウムの局在変化を蛍光顕微鏡で観察した。培養細胞はサンゴ粒子添加後21、28日おいて実験群で経時的に有意に増加した。サンゴ粒子表面のカルシウムはサンゴ粒子周囲の培養細胞内に移動した。毛細血管形成は対照群では二次元的であった。サンゴ添加群では血管形成が豊富かつ三次元的でネットワークが観察された。またSEMにおける観察ではサンゴ外骨格に細胞が突起を介して壁着していた。HUVECとNHDFを共培養した三次元培養におけるヒト毛細血管の新生は、サンゴ粒子が有用であることが示唆された。サンゴは骨補填材として知られ、生体吸収性材料であり、多孔質で細胞の増殖に有利な表面構造と化学的性状を有していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
多孔質材料のカルシウムの有無が毛細血管分化能に与える影響を明らかにする。多孔質材料周囲に形成された毛細血管中のVE-カドヘリン(Ca2+依存性接着分子)を画像解析による定量をおこない毛細血管分化能との相関を解析する。抜歯窩に骨補填材としてサンゴ粒子を填入することを想定し、サンゴ粒子とヒト歯根膜線維芽細胞との関係を培養細胞を用いて調査する。サンゴ粒子を足場として培養したヒト毛細血管組織組織移植片を、ヌードマウスに移植する。以上を実施予定である。
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