研究課題/領域番号 |
15K20499
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷 由理 北海道大学, 大学病院, 助教 (20626121)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Na,K-ATPase / Ca-ATPase / F型ATPase / propofol / desflurane / thiamylal / thiopental |
研究実績の概要 |
1.Na,K-ATPase活性測定及びリン酸化反応中間体(EP)測定の材料を作成した.Jorgensenの方法を改良した方法に準じて、ラット脳から膜分画を調整した.膜分画をドデシル硫酸ナトリウム処理した後にグリセロールの密度勾配遠心にかけてNa,K-ATPaseの精製を行った.この酵素を使用してpropofolの作用の検討を開始した。 2.ラット全脳のホモジェネートを調整し,Pottorfの方法に従って,ホモジェネートから形質膜(PII)及びミクロソーム(PIII)分画を調整し,CaあるいはMg-ATPase活性測定の材料とした. 3.各種ATPaseと活性発現に必要なイオン及び緩衝液を含んだ反応液に37℃でATPを添加してATPase反応を行い,反応により生じた無機リンをChifflet法により発色させ,分光光度計を使用して活性を測定した. 4.CaあるいはMgの添加の有無と,V型ATPaseの阻害剤であるbaffilomycine, F型ATPaseの阻害剤であるazide,P型ATPaseの阻害剤であるvanadateの組み合わせにより,Ca-ATPase,V型ATPase及びBasal Mg-ATPase活性を区別して測定する系を確立した. 5.リン酸化反応中間体(EP)量を測定する準備を行った。EP量の測定は,放射性の32P-ATPを加えてNa,K-ATPase のE32Pを形成させることにより開始した.次いで, 5 % trichloroacetic acid (TCA) 5 mlを加えて反応を停止した.酸変性させたEPをグラスファイバーフィルターにて捕捉した後、1 N塩酸、10 mM リン酸、10 mM ポリリン酸を含む溶液で洗浄した.フィルターごと水を入れたバイアルに入れ,液体シンチレーションカウンターを用いて、32P のチェレンコフ光を測定することによりE32P量を測定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.Na,K-ATPaseの精製,CaあるいはMg-ATPase活性を測定するための形質膜(PII)及びミクロソーム(PIII)分画の調整を予定通り終えた。 2.Chifflet法によるリン酸定量とATPase活性測定の系を確定し,Na,K-ATPaseに対するpropofolの作用の検討を開始した。また,阻害剤を使い分けることによってCaあるいはMg-ATPase活性を区別して測定する系も準備を終えた。 3.リン酸化反応中間体(EP)量を測定する準備を行い,EP量に対する麻酔薬の作用を検討することが可能になった。 4.沸点の低いデスフルランの取り扱いに難渋しているため、今後工夫を要する.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度で、基本的な試薬や材料の準備と実験系の確立を終えたので、今後それらをより応用した形で研究を進める予定である. 1.Na,K-ATPase活性,CaあるいはMg-ATPase活性測定反応液中に種々濃度の麻酔薬を添加して活性を測定することにより,各ATPaseに対する全身麻酔薬の作用を検討する.特に,Na,K-ATPase活性に対するpropofolの作用機構を詳細に検討する。 2.Na,K-ATPase反応のどの過程でpropofolが作用するのかを明らかにすることを目的に,リン酸化反応中間体(EP)形成に対する propofolの作用の測定を行う。 3.PII分画のアルカリ性で活性が観察されるMg-ATPaseはミトコンドリアのF型ATPaseと考えられる。そこで,一段階精製を進めて,propofolの作用を解析することにより,propofol infusion syndromeとの関連を考察する. 4.Desfluraneの取り扱い方法を改良して,Na,K-ATPase活性,CaあるいはMg-ATPase活性に対する作用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
可能な限り節約し、研究に必要な物品の一部を代替品等でまかなえたこと、また論文の校正に至るまで時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
計画している論文の投稿を進めること、予定通り実験計画を進めること、より積極的な学会発表および参加によって経費を使用しなければならない。また、新たな研究の進展によって化学薬品等の追加購入が必要となる。
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