研究実績の概要 |
1.Na,K-ATPase活性,Ca,Mg-ATPase活性測定反応液中に,種々濃度の麻酔薬(propofol, pentobarbital, phenobarbital, thiopental, thiamylal)を添加して活性を測定することにより,各ATPaseに対する全身麻酔薬の作用を検討した.特に,Na,K-ATPase活性に対するバルビツール酸系薬物(pentobarbital, phenobarbital, thiamylal)の作用機構を中心に詳細に検討した.実験により以下の結果を得た.2.5 mM ATP存在下ではpentobarbital, phenobarbital, thiamylal いずれも濃度依存的にNa,K-ATPaseを抑制した.一方,5 mM ATP存在下ではthiamylalは Na,K-ATPase活性を濃度依存的に抑制したが,pentobarbital, phenobarbital はラット脳およびウサギ脳Na,K-ATPase活性を濃度依存性に促進した.この結果について解析し、考察をまとめて発表に至った.
2.吸入麻酔薬のATPaseに対する作用を検討するために,水溶液中の揮発性麻酔薬の濃度を正確に測定する必要があった.VOCセンサーを使用した吸入麻酔薬の簡便な濃度決定法の研究が順調に進み,論文としてまとめ、現在投稿先と連絡を取り合っている段階である.
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今後の研究の推進方策 |
1.VOCセンサーを使用した吸入麻酔薬の簡便な濃度決定法に関する論文が受理されるよう,投稿作業を完遂する. 2.昨年度計画した研究内容の実施に努める.沸点の低いdesfluraneの取り扱い方法を改良して,実験計画を構築する.Na,K-ATPase活性に対するdesflurane,sevoflurane, isoflurane及びenfluraneの作用の測定を行う.まず, Na,K-ATPase活性及びEP量の測定を行う.また,活性及びEP量の測定の際に,各種濃度のdesflurane,sevoflurane, isoflurane及びenfluraneを添加することにより,これらの揮発性麻酔薬のNa+,K+-ATPase反応に対する作用を評価することができる.さらに,新規のdesfluraneの酵素活性に対する薬理学的な作用を,sevoflurane, isoflurane及びenfluraneの作用と比較して評価する. 3.Ca-ATPase,V型ATPase, F型ATPase及びBasal Mg-ATPase活性に対するこれらの揮発性麻酔薬の作用も検討する. 4.以上の研究成果を基に,全身麻酔薬の作用機構を総合的に再検討する.さらに,その成果を発表することを目標とする.
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