| 研究実績の概要 |
報告の少ない脳内のATPaseを対象として全身麻酔薬の作用に関する研究を進めた.
1.Na,K-ATPase活性に対する吸入麻酔薬の作用を定量的に解析する手法を確立し，海外雑誌に論文発表した．Volatile organic compound (VOC) sensing（VOCセンサー）を使用することにより，水系溶媒中のsevoflurane濃度を再現性よく測定し， 19F-NMRにて測定した濃度との相関も確認した．さらに，ウサギの血中sevoflurane濃度の測定も行い，その有用性を確認し報告した．これにより，水溶液中の吸入麻酔薬の濃度決定が容易になった．今後臨床応用を目指している．2.脳内情報伝達に関与する可能性があるCa2+-ATPase及びMg2+-ATPase, Na,K-ATPaseに対する全身麻酔薬の作用を解析した．麻酔薬関連薬は，Na,K-ATPase活性を濃度依存的に抑制するという結果が過去に多い中，バルビツール酸系薬物pentobarbitalとphenobarbitalはNa,K-ATPaseの分子構造をE1型に変化させることによりその活性を促進すること，thiamylalにはその作用がないことが明らかになり，この結果を発表した．また，各ATPase活性に対する6種の局所麻酔薬の阻害作用と，阻害が可逆的か否かを検討した．ラット脳には，局所麻酔薬により可逆的に抑制されるCa- 及びMg- ATPase活性が存在し 脳内に局麻薬が到達すると機能は抑制されると考えられ，現在論文公表に向けて準備中である．
3.Desfluraneと他の吸入麻酔薬とのATPase系に対する作用を比較検討して，薬理学的な評価を行っている．実験を進行中である．
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