組織修復や組織再生といった活発な組織改変の場における、間質細胞が構成する細胞外微小環境“ニッチ”の働きに注目し解析を進めた。特に骨髄から動員される遊走型間質細胞に着目し、組織再生モデルを用いて、組織再生の場における遊走型間質細胞の形成するニッチの機構解明に努めた。 In vivoの解析では、組織再生モデルとしてマウス再生軟骨モデルを使用した。マウス耳介軟骨細胞から採取した軟骨細胞を足場素材に投与し再生軟骨を作製し、マウス背部皮下に移植する動物モデルを用いた。前年度までの実験により、軟骨再生の各段階において再生軟骨を取り囲むように存在する間質細胞の局在を確認していたが、その機能や間質細胞の特異性については不明であった。そこで、本年度はpro-collagen I、CD34、CD11b、の免疫組織学的解析を追加し、組織再生の場における間質細胞の特異性について詳細に検討を行った。過去の検討において遊走型間質細胞は、間葉系細胞マーカーであるタイプⅠコラーゲン陽性および、骨髄由来/体性幹細胞マーカーであるCD34が陽性になることが確認されている。軟骨再生の場においては、再生初期にCD34陽性、タイプⅠコラーゲン陽性、pro-collagen I陽性の遊走型間質細胞が再生軟骨周囲に局在することが確認された。 In vitroの解析では、軟骨細胞と間質細胞の共培養実験系を用いて解析を行った。共培養時に軟骨再生が促進される系での培養上清を採取し、上清内に含まれるサイトカインを含むタンパク質の解析を行い、間質細胞から放出される再生誘導因子の探索を行った。
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