骨延長術は、手術浸襲も比較的少なく、骨そのものを延長して骨の形態を整える他に、その周囲軟組織再建を含めたhistogenesisといわれている。本研究では、顎骨延長モデルにおいて、生体安定性の材料を使用し、吸収性人工骨β-TCPに徐放性ゼラチンハイドロゲル・脂肪幹細胞を応用し、3次元的な骨延長を行い、さらに、骨形成・粘膜軟組織の再建治癒促進を図るために、自己血漿併用により、早期に成熟安定した骨形成および軟組織の再建が得られるか否かを評価解明し、臨床応用を目指すことを目的としている。 今年度は、他の担体の応用として、骨形成促進作用を有するRANKL結合ペプチドW9の併用実験を行った。RANKL結合ペプチドは骨吸収抑制作用だけでなく、骨芽細胞分化促進作用を示すことが明らかになっているが、ペプチド単独使用による異所性骨石灰化能は弱いといわれている。W9が成長因子により誘導される骨形成作用を促進するか否かについても検討を開始し、有用性を確認することができ、研究発表を行うことができた。 以上の成果を骨延長に応用できるかについても研究を推進し、各種材料における生体にとっての有害性の有無についても検討をすすめ、細胞機能解析を加味した研究を行いたいと考えていたが、十分な成果を得るには至らず、臨床応用に展開するにはさらなる時間を要すると考えられた。
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