研究課題/領域番号 |
15K20509
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
金丸 博子 (塚田博子) 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (30464019)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 下歯槽神経 / VEGF / 末梢神経再生 |
研究実績の概要 |
末梢神経損傷後の知覚障害や疼痛には、交感神経ブロックやレーザー照射など、血流増加を促すような治療法が従来から行われており 、臨床的な治療効果を挙げている。また、VEGFと末梢神経再生との関連性を示唆する報告、特にその詳細なメカニズムを追求した研究は少ないが、当科の慢性疼痛患者から摘出した神経 腫内部の観察では特異的な血管内皮細胞の変形が認められており、血管内皮細胞の形成に関する因子であるVEGFが末梢神経組織自体にも直接関与し、病態に影響 を与えている可能性が示唆されている。 本研究では神経再生過程におけるVEGFの関与を組織学的に明らかにすること、また抗VEGF抗体投与による組織学的・行動学的影響を検討することにより、新たな慢性疼痛治療・末梢神経再生治療法へ展開させる事を目的としている。 昨年度までに下歯槽神経切断モデルマウスを用い、VEGF受容体およびそのリガンドは下歯槽神経切断後、切断端に早期に発現すること、また血管内皮細胞のマーカーであるCD31の活性は切断後2、3日にピークをむかえ、神経線維が再接続した7日頃までには消退することがわかった。またVEGF-VEGFRの発現時期にVEGF中和抗体を投与し、VEGF機能を阻害すると、切断部におけるCD31の活性と再生経線維の伸長を阻害した。これによりVEGF-VEGFRシグナル伝達が神経線維再生の初期段階に深く関与 していることが示唆された。この結果を治療法へと展開させるため、今年度はマウスのvon Frey filament 試験による機械的触刺激閾値を測定することでVEGF中和抗体の投与の影響を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
von Frey filament 試験による機械的触刺激閾値の測定を行い評価する方針としていたが、マウスの下歯槽神経領域の感覚評価に難渋したこと、また研究中断期間があり、実験が停滞したため。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの下歯槽神経領域の感覚評価を継続して検討する予定であるが、感覚評価が困難と判断した場合には追求しない方針とする。これまでの検討によりVEGF中和抗体投与が神経再生の初期段階で再生を阻害する可能性について示唆されたものの、VEGF機能の阻害による長期的な予後については不明であるため、再生神経への長期的な影響や神経種形成とVEGF-VEGFRとの関連性について組織学的手法により検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに購入した試薬・物品により概ね研究遂行が可能であったこと、また研究者の私的理由で研究中断期間があり、その間の支出は皆無であったため。今年度の物品購入および旅費へ計上する予定である。
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