研究課題/領域番号 |
15K20510
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
北原 寛子 金沢大学, 大学病院, 助教 (70507053)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 血小板 / 上皮間葉移行 |
研究実績の概要 |
これまで、癌細胞の浸潤・転移において、上皮間葉転換(epitherial-mesenchymal transition: EMT)の関与が報告されてきた。近年、血管内の血小板が癌細胞を被覆し、この微小環境においてEMTと免疫寛容を誘導し、浸潤・転移促進に作用することが注目されている。しかし、血管外に漏出した血小板と口腔扁平上皮癌細胞との関係についての報告はない。本研究では、口腔扁平上皮癌の組織内血小板による浸潤・転移能獲得機構を明らかにすることを目的としている。 口腔扁平上皮癌一次症例患者より得られた組織標本を免疫染色し、たんぱく質の発現を検討した。血小板の発現を検討するためCD42b、Podoplanin、EMT間葉系マーカーとしてSnail、Vimentinを免疫染色した結果、浸潤性が高い浸潤様式4D型患者より得た標本では腫瘍細胞にSnail、Vimentin、Podoplaninの発現を認め、腫瘍周囲にCD42bの発現を認めた。つまり、浸潤性が高い症例では腫瘍は間葉系の性質を持つ傾向にあり、周囲に血小板凝集を引き起こしている可能性が示唆された。 また、細胞を用いて血小板と共培養をおこない口腔扁平上皮癌細胞株のEMT誘導について検討した。mRNAをreal-time RT-PCRで検討すると、共培養した細胞はしなかった細胞と比較し、間葉系マーカーが上昇する傾向があり、上皮間葉移行がおきている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は血小板との共培養下での浸潤様式の異なる口腔扁平上皮癌細胞株(OSC-20細胞、OSC-19細胞、HOC313細胞)のEMT誘導について検討予定であった。各細胞播種後に血小板を添加し、real-time RT-PCRにてEMT関連マーカーについて検討した。現在は結果より考察し、今後の実験を3種類の細胞株を使用して行うかどうか検討している。そのため、血小板との共培養下での癌幹細胞化、抗がん剤耐性獲得の検討も行う予定であったが検討するまでに至らなかった。 そこで細胞実験後に行う予定であった症例患者の組織標本を対象とした口腔扁平上皮癌組織中の血小板の局在と癌細胞でのポドプラニン/アグラスの発現についての検討を平成28年度から前倒しして本年度におこなうこととした。現在は浸潤様式4D型高浸潤癌の患者の組織標本よりCD42b、Podolanin、VImentin、Snail、E-cadherinについて検討を開始している。 本年度は実験結果より細胞実験に遅れがあり、次年度の実験を前倒ししたもののやや遅れていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、当初平成27年度に研究予定であった血小板との共培養下での口腔扁平上皮癌細胞株の癌幹細胞化についての検討並びに抗がん剤耐性獲得について検討をすすめていきたいと考えている。しかし、当初の予定では浸潤様式の異なる細胞株3種類を使用し、すべての実験を行う予定であったが、平成27年度の結果を踏まえ、血小板との共培養下でのmRNAの発現変化に乏しい細胞株についてはその後の研究を施行するか検討が必要と考えている。また、アスピリン添加による変化の検討が施行できなかったため口腔扁平上皮癌の治療薬としての働きを検討するためにも、血小板に加え、血小板凝集阻害剤であるアスピリンの添加によるEMT関連マーカーの発現変化、癌幹細胞化については迅速に検討したいと考えている。 また、平成28年度に予定していた組織標本使用した免疫染色に関しては現在検討途中であり、4D型症例数を増やし、検討を深めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は国内の学会参加が中心であり、国際学会のための外国費を使用しなかったため。また、平成27年度に抗がん剤の耐性獲得に関する実験をおこなう予定だったが、実験が遅れているため次年度に行うこととし、それに伴う経費は繰越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に使用していた遠心分離機の1台が故障したため、迅速に研究計画を遂行するため新しい遠心分離機を購入することとした。
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