研究課題/領域番号 |
15K20513
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
萩原 純孝 愛知県がんセンター(研究所), 中央実験室, 研究員 (40547551)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エキソソーム / 細胞外分泌 / CD109 |
研究実績の概要 |
CD109は癌関連分子として新規性に富む反面、生物学的機能については未知な部分が多い。2010年、申請者はin vitroにおいて、CD109が1270~1273番アミノ酸のFurinase特異的分解サイトにてデグラデーションを受ける結果として、180Kdaの可溶型CD109が培養上清中に分泌されることを発見した。以降、3年の時間をかけて動物実験でCD109が血液中に180Kdaの可溶型CD109として分泌されることを証明し報告したが、in vivoにおける分泌メカニズムは明らかにするべき大きな課題の一つであった。 そこで今年度は、HEK293細胞にFLAG標識したCD109遺伝子を導入し樹立したCD109高発現細胞の培養上清を回収して、得られた分泌型CD109の結合タンパクを質量解析して同定することを試みた。その結果、シンテニン・CD81・ALIXなどのエキソソームマーカーとの結合が確認され、CD109がエキソソーム内に係留された形で細胞外へ分泌されていることが示唆された。 TGFβシグナル分子との結合は確認されなかったが、近年、エキソソームは細胞外分泌機構の中でも、その中に含まれるmRNAなどの存在により、がんのシグナル伝達や細胞の遠隔転移の際にとても重要な役割を果たしていると考えられている。これらのことより、がん患者の血液中からCD109が同定されることで、がんの進展に関するエキソソームの存在も検出することが可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は2009年より名古屋大学にて臨床研究を開始したが、この度2015年4月、愛知県がんセンター中央病院へ転勤となった。臨床研究としてこれまで少しずつ拡張してきた実験システム(実験機器や試薬等の消耗品)を現医療機関に移管することは困難であった。研究協力体制の面においても、自身が所属していた名古屋大学の研究メンバーとの連携が難しくなった。 特に臨床検体の収集においては、こまで前医療機関においてSCC患者より提供いただきストックしてきた臨床検体を当医療機関へ移動させて使用することは倫理的に不可能で、少なくとも当医療機関で臨床研究を進めるにあたり、新たに当医療機関の生命倫理審査委員会へ本研究内容を申請の上、承認を得る必要があった。平成27年度は、研究計画の見直しを含めその準備を行うために時間が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、可溶型CD109とTGFβシグナル分子との間に直接的相互作用は確認されていないが、得られた結合タンパク質からその生物学的作用を『エキソソームによる細胞外分泌機構』にシフトして、がんの発生や進展に関連させて進めていくことは可能と思われた。 またTGFβに関連した分泌タンパクとして、すでに腫瘍マーカーとしての可能性が示唆されているCD44については、当初の予定通り血清検体中の濃度を測定する予定である。 研究課題の遂行に当初の計画内容にかなりの制限が加わる状況であるが、申請者の勤務診療科が歯科口腔外科から頭頸部外科へ変更になったこともあり、臨床研究の対象疾患を口腔癌から頭頸部扁平上皮癌に拡大してすすめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の転勤にともない、これまで少しずつ整備してきた実験システムを現医療機関に移管することは困難であった。 当医療機関で臨床研究を進めるにあたり、新たに当医療機関の生命倫理審査委員会へ本研究内容を申請の上、承認を得る必要があった。平成27年度は、研究計画の見直しを含めその準備を行うために、研究活動が一時滞った。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに腫瘍マーカーとしての可能性が報告されているCD44については、当初の予定通り血清検体中の濃度を測定する予定である。 申請者の勤務診療科が、歯科口腔外科から頭頸部外科へ変更になったこともあり、臨床研究の対象疾患を口腔癌から頭頸部領域全般の扁平上皮癌に拡大してすすめていく予定である。
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