研究課題/領域番号 |
15K20513
|
研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
萩原 純孝 愛知県がんセンター(研究所), 中央実験室, 研究員 (40547551)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 血清CD109 / 血清CD44 / 頭頸部扁平上皮癌 / 腫瘍マーカー / TGFβシグナル |
研究実績の概要 |
CD109はTGFβシグナルの調節因子であり、申請者らによるこれまでの研究においてCD109が口腔をはじめとする扁平上皮癌組織で免疫組織学的に高発現していること、180kDaの可溶型CD109が培養上清中に分泌されるこなどを明らかにした。その後、可溶型CD109の結合タンパクとしてCD81(エクソソームマーカー)が同定され、平成27年度には申請者が共同研究を行ったグループよりCD109がエクソソームを介して細胞外分泌されていることを論文発表した。 平成28年度より、当センター倫理審査委員会承認のもと、当院頭頸部外科で治療を行った扁平上皮癌患者の中から一次治療として手術が選択された患者をリストアップし、当院臨床検査部に凍結保存された余剰血清検体を使用した解析に着手した。ヒトCD109の血中濃度については、平成26年に前所属機関において口腔扁平上皮癌患者十数名の血清検体を試験的に解析した経験があるが、各患者において測定値のばらつきが大きく、また一般的に定められた基準値が存在しないため、同一患者群における手術前後の相対的な濃度変化に着目して解析を行う方針とした。 平成28年度は平成27年度の手術症例より、術前治療なし(過去5年以内での再発症例を除く)、かつ術前1ヶ月以内の血清検体と術後1年以内の血清検体の両者が凍結保存されている条件を満たす20症例を抽出し、CD109、HSP70、CD44-standard(std) /-variant 5(v5) /-variant 6(v6)の計5分子をターゲットにELISA法による血中濃度解析を行った。本年度は、同条件を満たす手術症例36例を追加抽出し、研究費の関係上CD109およびCD44v6に限定して解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の対象を、当初(課題申請時)は口腔領域の扁平上皮癌に限定していたが、平成27年の申請者の所属機関変更に伴い頭頸部領域全般の扁平上皮癌へと拡大し、当院倫理審査委員会の承認を得た後に研究を開始した。平成27年度の時点で、すでに研究の進行に遅れが生じていたが、症例の抽出を進める中でも、電子カルテ上の採血情報より研究対象リストにあげた血清検体が実際に解析に適切な検体であるかどうか、臨床検査部で管理されているDataファイルで検索確認する作業に予想以上の時間を費やした。今年度もこれまでの遅れを取り戻すまでには至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、36症例(72検体)をELISA解析したが、先行した20症例(40検体)の結果と統合する必要があること、UICCのTMN分類が改訂され新分類での解析も必要と思われたことより、1年間(平成30年度まで)の研究期間延長を申請した。CD109・CD44v6ともに、年齢・性別・T/N分類・病期・組織学的分化度等の臨床情報において各グループ間の検出値を比較したり、各患者ごとの術前術後の変化を統計学的に検討し、各分子の血中濃度が反映している臨床的意義を探究する。 また、当初の研究計画に、口腔扁平上皮癌患者の唾液中CD109・CD44濃度について唾液検体を採取して測定する計画をあげていたが、解析を行うにあたって予算が不足し不可能となった。そのため、CD109・CD44v6両分子の血中濃度に臨床的相関があるか否か等、臨床情報を可能な限り駆使した検討を追加する予定である。
|