以前の実験では小範囲の下顎欠損に対して仮骨延長術のみを用いて骨再建と下歯槽神経の再建を行い良好な結果を得ていた。しかし、広範囲の下顎欠損の再建に対し仮骨延長術のみを用いた場合は骨延長の過程で神経断端間を正確に接合させるのは困難であり、臨床上よく見られるような広範囲の下顎欠損に対応させるのは困難であると思われた。 そこで今回は仮骨延長術に人工神経移植を併用し、効率的な神経断端間の接合を図り、より広範囲の下顎欠損に対する下顎骨と下歯槽神経の回復を模索した。 当初、広範囲の下顎欠損に対し人工神経移植を併用した仮骨延長術で再建を行い評価していたが、人工神経の脱落により良い結果は得られなかった。そのため方法を改良しさらなる実験を行い良好な結果を得ることができた。 実験はビーグル犬10頭に対し、広範囲の下顎欠損を作製し、5頭は欠損部の神経断端間に人工神経移植を併用した仮骨延長術を行い、5頭は仮骨延長術のみで下顎再建を行い、術後6か月待機期間をおき、回復した下歯槽神経の活動電位の計測、神経トレーサーを用いた神経の連続性の確認、摘出した下顎骨の組織学的検索にて再生神経の評価を行った。 現在その評価途中であるが、人工神経移植を併用した仮骨延長術を行った1頭で再生神経の活動電位が得られた。昨年の報告とは異なり分析の結果、同個体では神経トレーサでは中枢への連続性が確認されなかった。 摘出した下顎骨は脱灰し評価を行っている。
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