研究実績の概要 |
近年、局所的炭酸ガス投与装置を開発し、血管拡張作用とBohr効果により、局所の酸素供給を増やし、細胞内のミドコンドリア量が増加することを発見した。さらに、この現象を癌細胞に応用し、in vivoにおいて扁平上皮癌に局所的炭酸ガス投与を行い、ミトコンドリア量増加によるミトコンドリア経路のアポトーシスの活性化によって、癌の増殖抑制とリンパ節転移の抑制がおこることを発見した。しかし、このリンパ節転移の抑制が、原発巣縮小によるものか、癌転移能の抑制によるものかは不明であった。本研究の目的は、この局所的炭酸ガス投与による口腔扁平上皮癌のリンパ節転移の抑制効果に対する新たな知見を得ることである。 in vitroでの検討で、ヒト口腔扁平上皮癌(HSC-3)を継代培養し、20%酸素下および1%酸素下で培養し、低酸素関連因子とEMT関連因子の発現を検討した。また同細胞をNude-Mouse皮下背部に移植し、7日後より週2回(20分/回)経皮的炭酸ガス投与を行い28日後に腫瘍組織を採取し、同様にReal-time PCR, Western-blot法、免疫染色法を用いて検討した。 in vitroでは、1%酸素下群と比較し20%酸素下群で、HIF-1α、Snail、Slug、 N-cadherin、 Vimentinの発現減少およびE-cadherinの発現増加を認めた。in vivoでは、対照群に比較し炭酸ガス投与群で、HIF-1α、Snail、Slug、 N-cadherin、 Vimentinの発現減少およびE-cadherinの発現増加を認めた。 結論として、経皮的炭酸ガス投与は低酸素環境改善によりEMT抑制効果があることが示された。
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