研究課題/領域番号 |
15K20522
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
明石 昌也 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40597168)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 悪性腫瘍 / リンパ節転移 |
研究実績の概要 |
口腔癌の所属リンパ節転移は患者の予後に係る最重要因子であるが、そのメカニズム解明はいまだ十全でない。近年、腫瘍が産生するサイトカインにより腫瘍内に血管/リンパ管新生(tumor angio/lymphangiogenesis)が生じるのと同様、所属リンパ節内においてもリンパ管新生(lymph node lymphangiogenesis)が転移に先んじて生じており、これがリンパ節転移促進のkey stepであると考えられている。従来の口腔癌研究は原発腫瘍そのものに注目した研究が多くを占める一方、転移リンパ節内の微小リンパ管網(lymphatic microcirculation)の変化に着眼した研究は極めて希少であり、本研究は、バリア機能や組織の恒常性維持に関与する細胞間接着複合体に注目し、転移リンパ節内の微小脈管構造の特質性を解明することを目的とする。 研究方法の具体的な手順は、研究者がこれまで従事して来た細胞間接着複合体に注目し、まず①in vivoで免疫組織染色や走査型電子顕微鏡を行い、転移の有無や被膜外浸潤の有無でどのような変化がリンパ節内に起こっているかを詳細に観察・評価する。これらの結果を基に、②細胞分子レベルでの解析をin vitroで培養細胞を用いて行う。具体的には、転移リンパ節内微小リンパ管網に特徴的な細胞間接着複合体の形態(morphology of cell junctions)や強度(integrity)、透過性(permeability)、直線性(linearity)を明らかにする。③最終的にこれら実験結果と臨床結果を比較し、転移リンパ節内微小リンパ管(血管)網の変化の診断が、earliest premetastatic indicatorやECSの直接的診断に有用かどうかを検討・考察する。 平成28年度の研究実績として、上記①に関する検討を行った。これまでの検討ではHE染色のみでの評価であったが、特定のマーカー(血管マーカー・リンパ管マーカー)を用いた免疫染色を施行し、リンパ節被膜外浸潤やリンパ節内微小脈管網の詳細な観察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、バリア機能や組織の恒常性維持に関与する細胞間接着複合体に注目し、転移リンパ節内の微小脈管構造の特質性を解明することを目的としている。 その方法として、以下の手順で研究を計画した。①in vivoにおける被膜外浸潤の検討、②細胞分子レベルでの解析、③細胞分子レベルでの解析結果と臨床結果を総合し、転移リンパ節内微小脈管網変化の診断が、癌のリンパ節転移や被膜外浸潤の早期発見に有用かどうかを検討・考察する 一昨年度は上記①すなわち手術標本を用いたリンパ節被膜外浸潤症例の臨床的特徴を検討し、その結果を国内学会で報告した。当該年度は、①手術標本を用いて免疫組織染色(血管マーカー、リンパ管マーカー)を行い、リンパ節内に起こっている微小脈管網を詳細に観察した。②細胞分子レベルでの解析は、培養細胞(ヒトリンパ管内皮培養細胞)を用いて行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後予定している研究は以下の通りである。①手術標本を用いて行った免疫組織染色を観察・評価した結果と、各症例の臨床結果との相互関係について評価を行う。②培養細胞を用いた研究をさらに進ませる。これらの研究結果をもとに、最終的に転移リンパ節内微小脈管網変化の診断が、癌のリンパ節転移や被膜外浸潤の早期発見に有用かどうかを検討・考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の予定として挙げた①in vivo実験、②in vitro実験、③in vivo・in vitro実験の内、当該年度は①②のみに集中したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の目標として①in vivo実験、②in vitro実験、③in vivo・in vitro双方の研究結果を総合し、転移リンパ節内微小脈管網変化の診断が臨床上有用かどうかを検討することを挙げた。当該年度は、①に関する追加免疫染色の結果を観察・評価できた。そこで次年度の研究費の使用計画としては、研究結果をまとめ、論文として報告する・また各学会等で発表していく予定とし、②培養細胞を用いた研究の継続に研究費を使用することを予定している。
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