口腔癌の所属リンパ節転移は患者の予後に係る最重要因子であるが、そのメカニズム解明はいまだ十全でない。近年、腫瘍が産生するサイトカインにより腫瘍内に血管/リンパ管新生(tumor angio/lymphangiogenesis)が生じるのと同様、所属リンパ節内においてもリンパ管新生(lymph node lymphangiogenesis)が転移に先んじて生じており、これがリンパ節転移促進のkey stepであると考えられている。従来の口腔癌研究は原発腫瘍そのものに注目した研究が多くを占める一方、転移リンパ節内の微小リンパ管網(lymphatic microcirculation)の変化に着眼した研究は極めて希少であり、本研究は、バリア機能や組織の恒常性維持に関与する細胞間接着複合体に注目し、転移リンパ節内の微小脈管構造の特質性を解明することを目的とした。 まず癌の制御とリンパ管との関わりについて理解を深めるため、リンパ管内皮細胞に対する放射線照射の影響を、細胞間接着複合体の形態や強度、透過性、直線性を指標に評価し、その結果、放射線照射の影響によりリンパ管内皮細胞の変化が明らかとなり、癌のリンパ節転移や放射線照射後のリンパ浮腫等の合併症の発症メカニズムへの理解に寄与することが出来た。 また手術検体を用いたHE染色及び特定のマーカー(血管マーカー・リンパ管マーカー)での免疫染色において、癌転移リンパ節内の転移部周囲のリンパ濾胞を詳細に観察した。
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