研究課題/領域番号 |
15K20534
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
竹縄 隆徳 山口大学, 医学部附属病院, 診療助教 (30711270)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 悪性腫瘍 / 腫瘍生物学 / 腫瘍診断学 / プロテオーム / タンパク質修飾 |
研究実績の概要 |
炎症性マウス線維肉腫腫瘍モデル(細胞株)の単一腫瘍細胞由来の性質の異なる2種類のクローン細胞に関する、プロテオミクスによる差次的発現解析の結果得られた発現に有意差を認めたタンパク質の中で、カルシウム結合タンパクであるcalreticulin (CALR)の口腔扁平上皮癌の発生や癌化を予知できるバイオマーカーとしての有用性を検討した。その結果CALRの発現は癌細胞の細胞質に認められ、今回検索した111名中44名(39.6%)にCALRの高発現が見られ、67名(60.4%)にCALRの低発現が見られた。また、CALR発現は、T分類 (p = 0.0027), N分類 (p = 0.0219), stage (p = 0.0013), さらに 転帰 (p = 0.0014)において有意差を認め、T3・T4症例、頸部リンパ節転移症例、Stage3・stage4症例、死亡症例で有意に高発現であった。また3年生存率は、高発現症例で50.1%、低発現症例で86.6%であり、 log-rank test(p < 0.0001)と有意差を認めた。なお多変量解析の結果、 低生存期間と 高発現は有意に相関していた(p < 0.0001)。以上より、CALRの高発現は有用な予後因子となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロテオミクスによる差次的発現解析の結果得られた発現に有意差を認めたタンパク質の中で、カルシウム結合タンパクであるcalreticulin (CALR)に着目し、口腔扁平上皮におけるそのバイオマーカーとしての有用性を検討できたが、他にも検討すべき事項が残されており、次年度以降、さらに検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、病理組織診断により、過形成上皮、異形成上皮、前癌病変、扁平上皮癌へとdysplasia-carcinoma sequenceを来たした症例、または過形成上皮、異形成上皮、前癌病変をそれぞれピックアップし、これらの症例のパラフィンブロックを用いて薄切切片を作製し、免疫組織染色法にてCALRの発現を検索する予定である。さらにこれらの結果と口腔扁平上皮癌の症例における結果とを比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロテオーム解析の結果から候補因子を絞り込む過程で、複数の候補因子が抽出されており、Calreticulinに絞り込むのに時間を要したため、口腔扁平上皮癌症例におけるCalreticulin発現の検討を行うことまでしかできなかったために、他のサンプルにおける検討や別の候補因子での検索まで行うことができず、次年度に行わざるを得なくなったため、次年度に物品費等を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、病理組織診断により、過形成上皮、異形成上皮、前癌病変、扁平上皮癌へとdysplasia-carcinoma sequenceを来たした症例、または過形成上皮、異形成上皮、前癌病変をそれぞれピックアップし、これらの症例のパラフィンブロックを用いて薄切切片を作製し、免疫組織染色法にてCALRの発現を検索する予定である。さらにこれらの結果と口腔扁平上皮癌の症例における結果とを比較検討する予定である。また、プロテオーム解析の結果から抽出された複数の候補因子の中から、Tropomyosin 1(TPM1)という因子について検索を計画している。
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