上気道開通性には、唾液中および上気道粘膜の表面張力が大きな役割を果たしている。これまでに、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)では、唾液中の表面活性物質(サーファクタント)の中でフォスファチジルコリン(PC)の濃度上昇が上気道粘膜の表面張力を低下させ、呼吸をしやすくさせていることがわかった。口腔・咽頭粘膜の内因性サーファクタントの生理的役割を解析するために、唾液サンプルから表面張力とPC濃度の分析を行った。表面張力はPull-off-forceテクニックを用い測定し、PC等のリン脂質の濃度はLC-MS/MSで測定した。女性の生理周期で、上気道開通性を保つため、女性ホルモンの影響を受け、PCが表面張力を調整している可能性が示唆された。また、OSAの発症リスクが高いとされるダウン症候群では、健常者と比べて唾液表面張力が有意に低く、年齢が高くなると表面張力が増加する傾向にあった。 唾液中のイオン性代謝物を一斉に測定できる技術があることがわかり、解析技術を駆使して、早期薬物治療法の開発を行っている。唾液中のリン脂質を活性化する物質の中で、より検出力が高い物質にターゲットを絞って研究を行った。PCの中の含有量が最も多いジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)を活性化する物質を標的物質として検索している。
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