研究課題/領域番号 |
15K20547
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
遠矢 明菜 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 助教 (80593649)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インスリン / 抗炎症作用 |
研究実績の概要 |
生体への外科的侵襲は肝臓における糖新生やグリコーゲン分解を促進するとともに、グルコースの細胞内への取り込みを障害することにより、外科的糖尿病(surgical diabetes)と呼ばれる高血糖を生じやすい。高血糖は創傷治癒を遅延し感染のリスクも増加させることから、近年周術期の血糖値管理が重要視されつつある。ブドウ糖は催炎症作用を有し、インスリンは抗炎症作用を有する。近年血糖値管理が患者の予後を左右することが明らかになってきた。 しかし、口腔外科手術において術中の血糖値管理が術後の炎症・治癒に及ぼす効果は報告されていない。本研究の目的は、口腔外科長時間手術における術中の血糖値管理が、術後の炎症性パラメータおよび退院までの日数に及ぼす影響を明らかにすることである。 組織再建を伴う悪性腫瘍切除手術で、手術時間8時間以上の患者を対象としている。インフォームドコンセントを得たのち、患者を無作為に血糖値管理群(GI群)、血糖値非管理群(コントロール群)の2群に分けている。GI群は血糖値80~120mg/dLを目標に、血糖値非管理群では、血糖値が200mg/dLを超えたときのみ速効型インスリンを単回投与し管理している。血糖値の測定は少なくとも30分に1回実施し記録し、手術中の平均血糖値も算出している。 手術後7日目まで数回採血(血液学検査、臨床生化学検査、血中サイトカイン濃度検査)を行っている。その検査値から、白血球数、CRP、総タンパク値を抽出し記録している。体温は、電子カルテ中の経時記録から、1日の中で最も高い体温を記録し、術後合併症は主治医からの聞き取りを行うことにより行い、創部感染、皮弁壊死、肺炎、臓器障害などを記録している。また、術中、術後の血中サイトカイン濃度(TNF-α, IL-1β, IL-6)の測定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織再建を伴う悪性腫瘍切除手術で、手術時間8時間以上の患者を対象としている。インフォームドコンセントを得たのち、患者を無作為に血糖値管理群(GI群)、血糖値非管理群(コントロール群)の2群に分けている。 組織再建を伴う8時間以上の手術と限定しているため、該当症例が十分でなかったり、患者の同意を得られなかったりしている。
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今後の研究の推進方策 |
組織再建を伴う8時間以上の手術に限定しており、該当症例が十分でないため、手術時間の最低ラインを下げること、組織再建を伴わない悪性腫瘍の長時間手術においてもデータをとることを検討中である。 また、血中サイトカイン濃度に加え、1例において酸化ストレスの測定を行っている。酸化ストレスも術後に影響する可能性があるため、今後も酸化ストレスの測定を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
血液検査外注分の請求が来ていない分があるため、差額が出ている。
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次年度使用額の使用計画 |
検査外注分の請求が来たら、予定通りになると思われる。
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