これまで歯髄幹細胞によって既存の脳細胞の潜在的な増殖能および分化能が活性化され、脳細胞の再生を促したとする報告があり、歯髄幹細胞が脳細胞の再生に深く関与していることが強く示唆されている。また、歯髄幹細胞はin vitroで神経細胞への分化がすでに証明されており、in vivoでも直接脳細胞へと分化することで神経再生を引き起こす可能性が高い。これまで、歯髄幹細胞の学習・記憶への治療応用はin vivoでの報告がなく、本研究では最終的に様々な病態モデルの歯髄幹細胞を健常あるいは病態モデル動物に投与し、学習・記憶障害に与える影響について多面的に検討することを目標としている。前年度までに、マウス由来の歯髄幹細胞と、コマーシャルベースで入手可能な歯髄幹細胞との機能比較分析を行い、効率的な歯髄幹細胞の培養・抽出方法の確立を行い、行動実験に供与できる十分な量の歯髄幹細胞ならびに培養上清の確保が可能となった。最終年度では、歯髄幹細胞とその培養上清を用いて、予備実験にて効果を認めていた行動実験について特に重点的に検討を行った。行動実験においては、学習・記憶と合わせて、前年度までに傾向の認められた神経障害性疼痛モデルへの歯髄幹細胞ならびにその培養上清の応用による治療効果の検討を行った。さらに、不安に対する作用についても効果を検討した。その結果、学習・記憶改善ならびに不安抑制効果について傾向を認めた。また、前年度までに神経障害性疼痛の改善効果について傾向を認めていたため、その例数の追加を行ったが、有意な効果まで得ることは出来なかった。これまで本研究で得られた成果を元に、現在論文投稿中である。
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