研究課題/領域番号 |
15K20549
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
後藤 尊広 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (60578912)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口唇口蓋裂 / 遺伝子 / 予防 / ラオス人民民主共和国 |
研究実績の概要 |
口唇口蓋裂(以下、CLPと示す)は複雑な病因を持つ先天異常である。日本人の発症率は約500人に1人とされ、先天性の体表奇形として最も頻度が高く、患者の多くが遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って発症に至る多因子疾患と考えられている。世界各国の研究者により原因遺伝子や、環境要因解明のための研究を行うもその全容解明には至っていない。そこで、当科における対外的に高い評価を得てきたラオス国での医療援助活動を通じて、ラオス人CLP患者の血液試料を積極的に収集し、遺伝的解析と疾患予防に関する研究を行っていきたい。口唇口蓋裂は出生時から成人に至るまで、審美・哺乳・咀嚼・言語障害を生じ、生後間もなくから手術を要する等、患者や家族の負担は計り知れない。さらに、ラオス人はCLPに関する遺伝及び環境要因、疫学について世界的に報告がない。この希少なラオス人のCLP関連候補遺伝子解析と日本人との比較、生活環境調査によって新たな知見を発見し、疾患予防の臨床応用を目指していきたいと考える。 平成27年ならびに平成28年にそれぞれ年1回ラオス国にてCLP無償手術プロジェクトを行い、患者血液試料を収集した。1回のプロジェクトでは20名前後の症例のみ手術が可能であるためおよそ40例分の患者血液試料を収集した。これら血液試料の収集と並行して、実験計画を策定し、特にTaqman SNP assayを行うため過去の報告(GWASやAssosiation Study)を参考にターゲットして興味深いSNPに関する検討を行っている。 現在のところ症例の血液試料もまだまだ増やす必要性があるが、同時に対照群の血液試料の収集が追い付いていない状況である。 しかしながら、できることから行うことをモットーにこれまでのラオス国での活動を英語論文にまとめ、現在投稿を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在のところ症例の血液試料もまだまだ増やす必要性があるが、同時に対照群の血液試料の収集が追い付いていない状況である。前者は目標数が300(患者・両親・親子で100triads)を設定、後者も少なくとも100を目標に考えていた。 しかしながら、1回の滞在が1週間程度で手術件数が20例という過密日程で患者ならびに両親の採血を行うことに追い付かない状況であった。そのため現在患者のみで60サンプル収集したが、まだ数として不足している。対照群に関しては症例群の収集に大幅な時間を要し、いまだ収集ができていない状況である。 これら血液試料収集数が目標数に達していないことが、研究計画から遅れをとる結果を招いている現状であり、最終年度である本年度またそれ以降も継続的に収集できるような対策を検討する必要があある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はラオス国での滞在日数を延長し、症例群のみならず対照群の血液試料収集を徹底的に行う必要性がある。また、対照群に関しては手術以外の日程で滞在・収集を集中的に行う必要がある。 現在、CLPの原因候補遺伝子のSNPタイピングを行う実験経過に遅れが生じている状況であるが、できることから行うことをモットーにこれまでのラオス国での活動を英語論文にまとめている。2010年から2016年までに12回ラオス国でCLP無償手術プロジェクトを行っており、我々の活動によって技術移転、医療器具・材料の無償提供、ラオス人口腔外科医の大学院受け入れ等を通じて、本来乳幼児期におこなわれるべき手術が高齢であった現状を改善してきた統計結果を示すことができる英語論文を執筆し投稿中である。 また、本年度に症例群を100、対照群を100サンプル収集し、実験を行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年ならびに平成28年はラオス国における血液試料収集を中心に活動を行ってきた。次年度(最終年度)はこれらを用いてTaqman SNP genotypingを行う等実験を中心に活動していきたいと考えているため差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年も継続的にラオス国を訪問しCLP無償手術活動を行いながら患者血液試料収集を行う。一方で対照群の血液試料を収集するために、別日程にて集中的に訪問する、もしくは訪問期間を延長する。これらにて実験を行い、学会発表さらに論文発表につなげていきたいと考えている。
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