研究実績の概要 |
H27年度では肢芽未分化間葉系細胞で特異的にRac1を欠損させたRac1遺伝子コンディショナルノックアウトマウス(Rac1fl/fl;Prx1-Cre)を作成し未分化間葉系細胞の段階(胎生12日齢)で四肢の採取を行い細胞レベルでの検討を行った。 採取した四肢細胞を高密度培養を行い培養0日、3日、5日で細胞の分化・増殖の検討を行った。その結果コントロール群(Rac1をノックアウトしていない細胞)に対しRac1をノックアウトした細胞では有位な細胞増殖の低下が認められた。また、軟骨の形成をAlcian blue染色を用い確認したところコントロール群とRac1をノックアウトした細胞ともに軟骨の形成が認められた。軟骨分化に対し定量的PCR法を用い軟骨細胞特異的な遺伝子(Aggrecan,Col2,Col10,SOX9)の発現量を検討した結果、分化に違いは認められなかった。 軟骨培養を5日行ったのちβグリセロリン酸を添加した石灰化培地に変更し培養を行った。その結果コントロール群に対しRac1をノックアウトした細胞の石灰化が促進されたことをVonKossa染色にて確認した。また、定量的PCR法を用いて骨芽細胞特異的な遺伝子(ALP,RUNX2,OSX)の発現量を検討した結果、Rac1をノックアウトした細胞で優位に発現量が増加した。 以上より肢芽未分化間葉系細胞でRac1遺伝子を欠損させたコンディショナルノックアウトマウス(Rac1fl/fl;Prx1-Cre)の肢芽細胞を用いた細胞培養系では、Rac1は細胞の増殖能を制御する因子であることが分かった。また、軟骨細胞の石灰化段階においては石灰化を促進させることが分かった。
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