研究課題/領域番号 |
15K20557
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
斉藤 芳郎 昭和大学, 歯学部, 助教 (70611581)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Rac1 |
研究実績の概要 |
H28年度は胎生12.5日齢のRac1コンディショナルノックアウトマウス(Rac1fl/fl;Prx1-Cre)の肢芽より細胞を採取し培養した結果、Rac1遺伝子の発現の低下と共に、未分化間葉系細胞および軟骨細胞増殖能の低下を認められた。さらに、軟骨分化の影響を定量的PCR法にて確認したところ、軟骨分化に関わる遺伝子群に優位な変化は認められなかった。軟骨の分化・増殖能にRac1がどのように関与するのかを検索するため、過去に報告のある軟骨の分化および増殖に関与する因子(BMP、TGF-β、EGF、FGF等)をRac1コンディショナルノックアウトマウスの胎生12.5日齢で採取した初期肢芽細胞に加え細胞培養を行ったところEGFを加えた群ではコントロール群に比べRac1コンディショナルノックアウトで細胞増殖の減少を認めた。 また、同様の細胞種で軟骨細胞培養を5日間行った後にβ-グリセロリン酸を加えた石灰化培地に変更しさらに5日間培養を進めた結果、 Rac1コンディショナルノックアウトマウス培養系において石灰化およびそれに関連した分子(Runx2、OSX、ALP)の発現量の上昇が認められた。この石灰化段階においてRac1がどのように関与しているかを検討するため、石灰化に関与する因子(BMP、TGF-β、EGF等)をRac1コンディショナルノックアウトマウスの胎生12.5日齢で採取した初期肢芽細胞に加え細胞培養を行ったところEGFがRac1遺伝子を介した石灰化抑制を行う可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肢芽未分化間葉系細胞特異的にRac1遺伝子を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスの肢芽細胞を用いた研究では、Rac1は未分化間葉系細胞、軟骨細胞及び石灰化段階に関与していることが示唆された。この細胞培養系ではRac1遺伝子欠損マウスの初期の四肢細胞を使用するため、採取するまでに時間がかかり予測された研究進行状況よりりやや遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
肢芽未分化間葉系細胞特異的Rac1コンディショナルノックアウトマウスの細胞培養系を用い、軟骨細胞増殖および石灰化を抑制するシグナル経路の探索を行う。現在までの実験よりEGFは軟骨細胞増殖、石灰化を抑制する可能性が示唆されており、EGFのシグナル経路とRac1の関連を探索する。そのためにEGFのシグナルであるMAPK、PI3K、JAK/STATシグナル経路、それぞれのインヒビター因子を加えることで石灰化の抑制に関与するであろう経路を同定する。また、EGFのシグナル経路においてRac1がどこで関与するかをタンパクレベルで解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
肢芽未分化間葉系細胞特異的Rac1コンディショナルノックアウトマウスの胎生12日齢の肢芽細胞を使用するためにマウスの交配および必要量の細胞採取に時間がかかる。また、実験系も複雑であるため再現性を得る実験にも時間がかかることで実験の遅延が生じている。 In vitroで得た成果に対し、In vitoroで生じているマウス成長板での変化の整合性を得ることに遅延が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
肢芽未分化間葉系細胞特異的Rac1コンディショナルノックアウトマウスの胎生12日齢の肢芽細胞で起きている変化をより詳しく解析するために、細胞培養系においてさまざまな因子を加え、その解析を行う予定である。また、すでに関与の可能性のある因子(EGFなど)においては細胞内シグナル経路において変化が生じている可能性があるためタンパクレベルでの解析を行う予定である。 同時に成長板軟骨の骨格標本を作成しIn Vivoで、同様の変化が起きている可能性があるかを免疫染色にて解析する予定である。
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