研究課題/領域番号 |
15K20563
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
青野 悠里 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (50508497)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アセチルコリン受容体 / 側坐核 / ラット / 脳微小透析法 / 薬理学 |
研究実績の概要 |
中脳辺縁系ドパミン神経系が投射する側坐核では,神経活動を抑制すると想定されるδおよびμ受容体がコリン性介在神経に認められる。δとμ受容体にはδ1,δ2およびμ1,μ2のsubtypeがあるが,これら受容体の側坐核のコリン性神経活動制御への関与は明らかでない。そこでδまたはμ受容体ligandが側坐核の細胞外アセチルコリン(ACh)量に及ぼす効果を指標として,δおよびμ受容体subtypeの側坐核のACh神経活動調節における役割をin vivo微小透析法により解析した。実験にはS-D系雄性ラットを用い,側坐核から試料として得た細胞外液に含まれるAChをHPLC-ECD法で15分毎に定量した。試料中のAChの分解を減少させるため,低濃度のphysostigmine(50 nM)を灌流液へ添加した。腹腔内投与したnaloxonazineを除き,透析プローブを介して側坐核へ逆透析で灌流投与したδまたはμ受容体ligandの用量は,灌流液中の総量(mol)で示した。その結果,δ1受容体agonistのDPDPE(300 pmol)とδ2受容体agonistのdeltorphin II(3 pmol)が示したAChの減少効果は,それぞれδ1受容体antagonistのBNTX(0.3 pmol)またはδ2受容体antagonistのNTB(15 pmol)の併用で抑制された。μ受容体agonistのendomorphin(EM)-1,EM-2(30 nmol)が誘発したAChの減少はμ受容体antagonistのCTOP(3 nmol)の併用で抑制されたが,μ1受容体antagonistのnaloxonazine(15 mg/kg ip)の併用では著変がなかった。 以上のことから側坐核のACh神経活動は,δ1,δ2受容体のほかμ1ではなくμ2受容体により抑制されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験を予定よりも早く終えることができた。本研究の成果の一部について,2015年10月に米国シカゴで行われたNeuroscience 2015と2016年3月に横浜で行われた日本薬理学会で発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は,かねてより課題としていたδ受容体を介した側坐核のモノアミン神経活動亢進のメカニズムについて,同部位に分布する抑制性神経機構の関与の面から解明に取組むことを計画している。
【役割分担】統括,神経化学・行動学・組織学実験の遂行:青野悠里(研究代表者),実験の遂行:木口友里(研究協力者),渡邉由梨子(研究協力者),研究の助言:三枝 禎(研究協力者),J. L. Waddington(海外研究協力者)
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験が終了したため,337,479円を使用せずに残した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度へ繰り越す337,479円と次年度経費のうち150万円を実験のための物品費として使用することを計画している。主たる使途は,実験動物,試薬,HPLC消耗品の購入である。このほかに20万円を旅費に充てる予定である。この旅費は,本年の7月2~3日,3~5日にかけていずれも韓国のソウルで行われる日本神経精神薬理学会年会とCINP(国際神経精神薬理学会)における研究成果の発表のための渡航費(5泊6日)におもに用いる。
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