研究課題/領域番号 |
15K20565
|
研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
中原 賢 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (20610257)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 垂直的歯槽骨欠損 / 骨造成 / 骨補填材 / 歯科用インプラント |
研究実績の概要 |
歯科インプラント治療において、垂直的な歯槽骨の欠損部位に対しての骨造成方法、骨移植材の選択は非常に大きな問題である。本研究は、インプラント埋入のための骨造成に必要な情報を得るために、現在はまだ広く用いられていない、リン酸カルシウム系のブロック型骨補填材に注目した。27年度は、溶解度の高いα型リン酸三カルシウム(α-TCP)にハイドロキシアパタイト(HAp)を補強材として混合したブロック型骨補填材と、β型リン酸三カルシウム(β-TCP)にHApを混合したブロック型の骨補填材を用いて、以下のような動物モデルを作製した。 ビーグルの成犬8頭を用いて、すべての両側下顎前臼歯と第一後臼歯を抜去し、3か月の治癒期間経過後、抜歯部位に画一な垂直的骨欠損を作製した。骨欠損部に、欠損部と同サイズのα-TCP+HAp、β-TCP+HApのブロックを無作為に挿入し、スクリュー固定した。また、欠損部に骨造成を行わないネガティブ・コントロールも作製した。メンブレンの効果も検索するため、移植部位の半数はメンブレンにて被覆し、粘膜を縫合した。骨のリモデリングの確認のため、屠殺3週前と1週前に骨ラベリング剤を投与し、骨造成後6か月で安楽死させ、試料を採取した。採取した試料は固定後、マイクロCT撮影し、現在は樹脂包埋の作製過程にある。 一部の試料にはフィステルが認められ、メンブレンで被覆したものに多く見られた。マイクロCT画像においては、α-TCP+HAp、β-TCP+HAp移植部位のどちらにも頬側に吸収が見られた。次年度は、研磨切片の作製を用いて組織形態計測を行うとともに、マイクロCTの解析を行う予定であり、骨移植材の有用性を詳細に検証したいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
移植材の性質を考え、垂直的な骨欠損症例に対しての骨移植材の有用性を詳細に検証するため、最も有効であると考えられる前述の骨造成実験を行った。すでに、動物実験モデルを作製し、採取した試料はマイクロCT撮影を終えているが、現在試料は包埋過程にあり、次年度に組織解析のための試料作製の続きから行う必要があるため、このように判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
研磨切片作製後、組織学的観察、組織形態計測を行う。特に、骨移植材の結合をみるために、既存骨との境界部分を観察するとともに、移植部位内部の新生骨や残存している骨移植材を観察し、移植材料自体の変化を検討する予定である。移植部位の境界は底部・側壁の2か所を比較し、その違いを比較する。使用した2種類の移植材の比較とともに、これまでに行った自家骨移植のデータとの比較も行う。 また、今年度撮影したマイクロCTのデータから、移植材の様子や骨吸収の状態を三次元的に観察するとともに、骨量や骨密度などを解析し、組織形態計測と照らし合わせ、インプラント治療のための骨造成への指標となる情報を得たいと考えている。 次年度は解析をできる限り進め、学会発表により助言をもらうなど、国際誌への投稿にむけて研究をまとめていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、動物モデルの作製からマイクロCT撮影、樹脂包埋までの標本作製のために研究費を使用した。今年度使用する予定であった、解析に関わる研究費は、次年度解析を進めながら使用したいと考えたため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は試料の包埋過程にあり、次年度から解析を進める。詳細な組織学的観察や組織形態計測を行うとともに、今年度撮影したマイクロCT画像を元に解析を行う予定である。これらの解析に従い次年度使用する。
|