研究課題
本研究は、認知症患者における認知機能障害の病態と唾液成分変化との関連性を科学的に明らかにし、認知機能障害の病態評価を唾液検査に応用しようとする試みである。応用が可能となれば、認知症の早期診断・予後管理も期待でき、社会問題である認知症の患者数の改善や家族の負担減少にも貢献できることから、医療費の抑制につながる極めて重要な意義をもたらす研究となる。この唾液を用いた認知機能障害の評価をヒトにおいて応用のために、まずはマウスを用いた検討から実施した。平成27年度においては、認知症モデルマウスにおける唾液中の認知機能障害マーカーを探索し、唾液成分への影響をメタボローム解析で検討する計画であった。現在までに、アルツハイマー型モデルマウスと脳血管性モデルマウスを作製し、それぞれの空間記憶力の障害の程度を高架式十字迷路を用いて評価した。アルツハイマー型モデルマウスは、アミロイドβ(20pmol/5μl PBS)を脳室内投与し作製した。脳血管性モデルマウスでは、麻酔下で両側総頸動脈を20分間閉塞しその後再疎通させることで、一過性脳虚血を起こしモデルを作製した。行動解析の結果、脳血管性モデルマウスにおいて空間記憶力の低下が認められ、さらには認知症治療薬tacrineの投与により障害が改善した。この結果から、このマウスにおける唾液中の代謝産物に関してメタボローム解析を行った。その結果、脳虚血により複数の唾液中物質が変動しているを認められ、その中にはtacrineにより改善するものも同定された。今後はその結果をさらに詳細に解析し、学会発表等を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
アルツハイマー型モデルマウスと脳血管性モデルマウスを作製し、脳血管性モデルマウスにおいて空間記憶力の低下が認められ、さらには認知症治療薬の投与により障害が改善した。この結果から、このマウスにおける唾液中の代謝産物に関してメタボローム解析を行ったところ、脳虚血により複数の唾液中物質が変動しているを認められ、その中には認知症治療薬により改善するものも同定された。これらの結果から、平成27年度中の計画は概ね予定通り進行している。
動物実験で同定された物質のうち、ヒト唾液中で検出可能なものを決定し、認知症患者における病態と認知機能障害の評価に有用である物質の関連を解明する予定である。
認知症モデルマウスの作製にかかる費用が当初の予定よりも少なく済んだため。
ヒトにおける唾液採取関連器具の購入等に充てる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
CRANIO®: The Journal of Craniomandibular & Sleep Practice
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神奈川歯学
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10.1017/S0007114515001403