ポリフェノールは様々な植物に色素や苦みの成分として含まれており、その作用が注目されている。ポリフェノールの一種であるカテキンはワインやお茶に多く含まれ、強い抗酸化作用があることが報告されている。本研究はカテキンを利用した生活歯髄切断材料を開発することを目的として行った。7週齢のSDラットの上顎臼歯に対して生活歯髄切断を行った。全身麻酔下で歯冠部歯髄を切断後、酸化亜鉛ユージノールセメントに各濃度のエピガロカテキンガラート(0.1%、1.0%、5.0%)を添加し、切断面を覆った。さらに上部は即時重合レジンで封鎖した。1週間後、上顎臼歯にHE染色組織切片標本を作製し、観察した。カテキン濃度0.1%ではコントロール(カテキン濃度0%)と比較して炎症性細胞浸潤の変化は軽度であった。カテキン濃度1.0%と5.0%では炎症性細胞浸潤は減少していた。続いてエピガロカテキンガラートの抗菌作用を評価するために、Streptococcus mutansをTY培地で増殖させる時の培地中にカテキンを含有させた場合について検討した。エピガロカテキンガラートの濃度が0.01%の場合、培養24時間後ならびに48時間後の細菌量が約半分程度抑制されていた。さらに、カテキンを持続的に作用させるために、材料にカテキンをチャージする機能を付与することを検討した。カテキンをチャージする機能を付与するために、nano porous silica(NPS)を材料に添加して、添加した場合としない場合で比較した。その結果、NPS含有材料はそうでないものと比較して多くのカテキンをチャージし、徐々にリリースすることが確認された。抗菌作用や抗炎症作用を有するカテキンと、カテキンを多く含有することができて徐々にリリースすることを可能とするNPSの応用により、新しい生活歯髄切断材料が開発されることが示唆された。
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