研究実績の概要 |
申請者らは、再生歯の生理的機能を特定する因子を探索したところ、IGF-I添加により再生歯の大きさの増大と咬頭数の増加を認めた。IGF-Iが、再生歯の大きさに関与していることを明らかにしたが、再生歯の咬頭形成の分子メカニズムは未だ不明である。本年度は、咬頭形成に必須のエナメル結節とIGF-Iの関連性を解明するために、エナメル結節形成におけるIGF-Iの影響を解析した。再生歯胚の発達過程におけるエナメルノットマーカーであるFGF4の発現をホールマウント in situ ハイブリダイゼーションにより解析した。まず、野生型マウス胎仔から、胎生14.5日齢の下顎臼歯歯胚を摘出し、再生歯胚を作製し、この作製した再生歯胚をIGF-I添加群、非添加群にて器官培養(Ikeda et al, PNAS, 2009)を行った。培養1日目の再生歯胚では、FGF4 の発現は検出されなかったが、培養2日目の再生歯胚において、IGF-I添加群、非添加群ともにFGF4の発現が検出され、培養3および4日目の再生歯胚では、歯冠幅径の増大に応じてFGF4の発現領域が拡大した。培養5日目の再生歯胚では、FGF4発現スポットが検出され、IGF-I添加群では4.3 ± 0.5個、IGF-非添加群では3.2 ± 0.4個の発現スポットを示した。これらの結果は、再生歯胚の発達過程において、IGF-Iはエナメル結節の数を増加することを示す。以上により、IGF-Iにより再生歯胚におけるエナメル結節数が増加することで、再生歯の咬頭数が増加することが示唆される。本研究によりえられた成果は、未だ不明である再生歯の咬頭形成の分子メカニズムの解明の一助となる。
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