近年、食育に関心が高まっており、よく噛むことへの重要性が認識されている。一方、日本人において歯科矯正治療への期待は歯の排列のみのことが多く、咬合の重要性は理解されにくい。今まで、成長期における不正咬合が全身に与える影響について様々に検討されてきたが、食感に関する情報が投射し処理される大脳皮質運動野・感覚野に関しては不明な点が多い。したがって、本研究の具体的な目的は、「不正咬合が大脳皮質の発達に与える影響を解明」ことである。液状飼料飼育に対し、電気生理学的手法を用い、成長期における不正咬合の影響を中枢から捉えていくことが本研究の独創的な点であり、研究結果は歯科領域のみならず、成長期の食生活指導において非常に有意義なものであると考える。 本年度は、成長期における大脳皮質一次運動野におけるホムンクルスの発達を検討する目的で、大脳皮質一次運動野に刺激を与え、それに対する顎二腹筋・オトガイ舌筋活動について検討を行った。その結果、5~9週齢ラットにおいて一次運動野におけるホムンクルスは拡大されること、9~11週齢においてホムンクルスは大きさが変化しないことが示された。3、4週においては記録を取ることはできたものの、安定しない結果となった。 また、大脳皮質一次運動野と重複する部位を持つ咀嚼野の発達及び液状飼料飼育の影響を捉える為、咀嚼野(A area 及びP area)に対し、電気生理学的手法により刺激を与え、それに対する顎二腹筋、咬筋の活動について検討を行った。その結果、5~11週齢において液状飼料飼育群は対照群に比較し、顎運動、筋活動の面から機能低下が示された。
|