現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯の移動開始後 3~7 日にかけては、VEGF-1 ならびに VEGFR-2 は CD31 陽性細胞だけでなく他の歯根膜細胞にも発現が認められ、経時的に増加し、組織再生・修復過程への関与が疑われた。そこで、歯根膜細胞における VEGF-A による VEGFR-2 の発現誘導について、平成 27 年度には分子生物学手法を用いた VEGF 依存性 VEGFR-2 誘導に着目した歯根膜細胞の賦活化を予定しており、不死化歯根膜クローン細胞の作製を予定していた。 歯根膜はさまざまな細胞の集合体であることから、これまで初代培養の歯根膜細胞を用いた研究では、歯根膜サンプルや実験によって、安定した実験データを得ることが困難となり、1)歯根膜クローン細胞株の必要性、2)継代数による細胞特性の変化という実験上の課題があった。そこで本研究のために、人為的にヒト・テロメラーゼ遺伝子(hTERT 遺伝子)を安定発現させた不死化歯根膜細胞クローン細胞をはじめに作製することとした。 しかし、安定した培養条件がそろわなかったため、平成28年度~29年度に計画していた、咬合刺激低下歯に対する効率的な矯正学的システムの構築を先に検討することとした。 ラット咬合刺激低下歯に対するLIPUSの効果を検討するため、ラット臼歯咬合刺激低下モデルを用いてラット歯周組織の廃用性萎縮をおこしたのち、2週間のLIPUS照射に対する歯槽骨の変化を観察した。現在マイクロCTによる解剖学的変化の観察を行ったが、今後VEGF, VEGFR-1, VEGFR-2 および CD31 等の各種の血管新生因子および血管標識因子、フリーラジカル、炎症性サイトカイン、TUNEL 染色などの免疫組織学的解析、リアルタイム PCR によるメッセージレベルでの発現量の定量化や、イムノブロッディング法によるタンパク質レベルでの発現量の評価を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っているラット咬合刺激低下歯に対するLIPUS照射による歯周組織の賦活化が明らかとなったのち、10gfのTi-Niコイルスプリングを用いた咬合刺激低下歯の実験的移動へLIPUS照射が与える影響を検討する。歯の移動開始後 1, 2, 3 および 7 日後での変化について矯正学的移動量、VEGF, VEGFR-1, VEGFR-2 および CD31 等の各種の血管新生因子および血管標識因子、フリーラジカル、炎症性サイトカイン、TUNEL 染色などの免疫組織学的解析、リアルタイム PCR によるメッセージレベルでの発現量の定量化や、イムノブロッディング法によるタンパク質レベルでの発現量の評価を行う。また、矯正力の検討を行うため、2gfのコイルスプリングを用いて同様の実験を行うこと、リカバリーモデルとしてラット臼歯咬合刺激低下後、上顎切歯に装着した咬合板と下顎切歯に装着した金属冠を除去し咬合刺激を再開させた群と咬合刺激を低下させたまま、2gf/10gf の矯正力を間欠的に与えた群を作製し比較検討を行うことで咬合刺激低下歯に対する効率的な矯正学的移動システムの構築を行うことを予定している。 現在培養条件の検討を行っている不死化歯根膜クローン細胞の作製をすすめ、不死化歯根膜クローン細胞を、VEGF-A を添加した条件で培養し、LIPUS を照射した際のクローン細胞における VEGFR-2 の発現量の経時的変化と、細胞分化の過程について検討する。方法としては、蛍光抗体法による培養細胞における VEGFR-2 の免疫染色と、リアルタイム PCR による mRNA の発現量の定量化や、イムノブロッディング法によるタンパク質の発現量の評価を行うことを予定している。
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