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2016 年度 実施状況報告書

VEGF/VEGFRに着目した咬合刺激低下歯の効率的な矯正学的移動システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 15K20582
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

臼見 莉沙  東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (90706946)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード咬合刺激低下 / 廃用性萎縮 / 歯科矯正 / LIPUS
研究実績の概要

われわれはラット臼歯の咬合刺激を低下後、矯正力を用いて移動する実験系において、咬合刺激の低下が歯根膜における退行性変化をもたらし、咬合刺激低下歯を矯正力を用いて移動した場合、正常咬合歯とは異なる移動様相を呈しCD31、VEGF-A およびVEGFR-2 の発現に影響を与えることを明らかとしてきた。さらにVEGFR-2 陽性細胞が、矯正力による違いや、組織障害、またその修復過程に与える影響について詳細な検討を行っている(研究スタート支援#25893073)。そこで、本研究ではVEGF/VEGFR に着目し、効率的な咬合刺激低下歯の移動システムを構築することとした。
具体的には①分子生物学手法を用いたVEGF 依存性VEGFR-2 誘導に着目した歯根膜細胞の賦活化、②咬合刺激低下歯に対する効率的な矯正学的移動システムの構築、という2 点について細胞培養実験および疾患動物モデルを用いて研究計画を立案した。前年度は②について、12週齢のSD系雄性ラット15匹を、正常咬合(C)群、咬合刺激低下(H)群、咬合刺激低下およびLIPUS照射(HL)群の3群(各群5匹)に分け、咬合刺激低下による廃用性萎縮に対するLIPUS照射の効果をマイクロCTにより解析した。本年度は、同モデルのラット上顎M1の遠心頬側根の歯根膜を採取し、VEGF、Runx2、Twist1、CTGFおよびペリオスチンについてmRNA発現レベルを定量評価した。結果としてM1歯根膜組織の定量PCR解析により、VEGFおよびRunx2の各mRNAの発現レベルは、HL群においてH群に比較し有意に高いことが明らかとなった。また、Twist1、CTGFおよびペリオスチンのmRNA発現レベルは、C群に対してH群で有意に低く、HL群では高いことが認められた。
この内容についてはThe Angle Orthodontistに掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

歯の移動開始後3~7 日にかけて、VEGF-1 ならびにVEGFR-2 はCD31 陽性細胞だけでなく他の歯根膜細胞にも発現が認められ、経時的に増加し、組織再生・修復過程への関与が疑われた。そこで、まず歯根膜細胞におけるVEGF-A によるVEGFR-2 の発現誘導について検討するため、人為的にヒト・テロメラーゼ遺伝子(hTERT 遺伝子)を安定発現させた不死化歯根膜細胞クローン細胞をはじめに作製することとした。
しかし安定した培養条件が揃わなかったため、平成28~29年度に計画していた咬合刺激低下モデルを用いた効率的な矯正学的歯の移動システムの構築を先行することとした。まずLIPUS照射が咬合刺激低下により低下した骨代謝を回復することを予想し、歯槽骨の骨微細構造およびその背景となる骨分化制御因子の発現を検証した。本研究におけるPCR解析から、実験モデルにおけるRunx2遺伝子の発現レベルは、H群と比較してLIPUS照射したHL群の歯根膜において有意に上昇するという結果が得られた。しかし、マイクロCT解析からは、咬合機能低下歯の菲薄化した歯根膜の回復は示唆されたものの歯槽骨骨密度については、有意な回復が認められなかった。先行研究に、LIPUS照射されたヒト歯根膜細胞において、Runx2を介してBMP2遺伝子の発現が上昇し、BMP2タンパクの産生が増加する報告があるが、彼らの培養細胞モデルでは、ヒト歯根膜細胞からのBMP2タンパクの産生は、培養5日目から徐々に増加し、7日目にて産生レベルはピークに達し、14日目まで産生量がほぼ一定であった。先行研究と本研究の結果を比較すると、本研究の5日間のLIPUS照射期間は、萎縮した歯槽骨組織の回復を達成するのには十分ではなかったことが考えられ、照射期間の延長も検討する余地がある。

今後の研究の推進方策

①不死化歯根膜クローン細胞の賦活化
人為的にヒト・テロメラーゼ遺伝子(hTERT 遺伝子)を安定発現させた不死化歯根膜クローン細胞を、VEGF-A を添加した条件で培養し、LIPUS を照射した際のクローン細胞におけるVEGFR-2 の発現量の経時的変化と、細胞分化の過程について検討する。方法としては、蛍光抗体法による培養細胞におけるVEGFR-2 の免疫染色と、リアルタイムPCR によるmRNA の発現量の定量化や、イムノブロッディング法によるタンパク質の発現量の評価を行うことを予定している。
②咬合刺激低下歯に対する効率的な矯正学的移動システムの構築
1)咬合刺激低下歯に対するLIPUS の使用と2) 咬合刺激低下歯に軽度な虚血負荷を繰り返し与えた後矯正力を用いて移動を行う方法を行う。1)は前述の方法と同様に、ラットの臼歯の咬合刺激を低下させ2week 経過後、LIPUS を照射しながら矯正学的歯の移動を行い、移動開始後1, 2, 3 および7 日後における移動量、VEGF, VEGFR-1, VEGFR-2 およびCD31 等の各種の血管新生因子および血管標識因子、フリーラジカル、炎症性サイトカイン、TUNEL 染色などの免疫組織学的解析、メッセージレベルで観察を行う。2)は¥前述同様に、ラットの臼歯の咬合刺激を低下させ2 週間経過後、咬合刺激低下に用いた装置の除去を行い咬合刺激を再開させた群、咬合刺激を低下させたまま、2gf/10gf の矯正力を間欠的に与えた群を作成し、その後臼歯の矯正学的な近心移動を行う。移動開始後1, 2, 3, 7 日後に1)同様、免疫組織学的解析、リアルタイムPCRによるメッセージレベルでの発現量の定量化や、イムノブロッディング法によるタンパク質レベルでの発現量の評価を予定している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Low-intensity pulsed ultrasound reduces periodontal atrophy in occlusal hypofunctional teeth.2017

    • 著者名/発表者名
      Kasahara Y, Usumi-Fujita R, Hosomichi J, Kaneko S, Ishida Y, Shibutani N, Shimizu Y, Okito A, Oishi S, Kuma Y, Yamaguchi H, Ono T.
    • 雑誌名

      The ANGLE ORTHODONTIST

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.2319/121216-893.1.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] LIPUS照射は咬合刺激低下歯の歯周組織を回復する2016

    • 著者名/発表者名
      笠原 由紀, 臼見 莉沙, 隈 陽一郎, 大石 修史, 沖藤 明日香, 清水 康弘, 渋谷 直樹, 石田 雄之, 金香 佐和, 細道 純, 小野 卓史
    • 学会等名
      第75回日本矯正歯科学会大会
    • 発表場所
      徳島県徳島市
    • 年月日
      2016-11-07 – 2016-11-09
  • [学会発表] Effect of low-intensity pulsed ultrasound on periodontal tissues in occlusal hypofunctional teeth2016

    • 著者名/発表者名
      Yuki Kasahara, Risa Usumi-Fujita, Jun Hosomichi, Sawa Kaneko, Yuji Ishida, Naoki Shibutani, Yasuhiro Shimizu, Asuka Okito, Shuji Oishi, Yoichiro Kuma, and Takashi Ono.
    • 学会等名
      The 38th Annual Scientific Conference on Dental Research
    • 発表場所
      Ho Chi Minh city, Vietnam
    • 年月日
      2016-04-04 – 2016-04-04
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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