研究課題/領域番号 |
15K20587
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊藤 慎将 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40633706)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Runx/Cbfb / 神経堤細胞 / 頭蓋顔面発生 / 頭蓋骨形成 / 口蓋裂 / 小下顎 |
研究実績の概要 |
鎖骨頭蓋異形成症(CCD)は膜性骨の形成異常による鎖骨欠如や泉門閉鎖遅延と、中顔面部低形成に加えて、多数の埋伏歯を伴う永久歯の萌出障害を主徴とする。本疾患は顎顔面骨格の発育異常と、永久歯萌出遅延による歯列不正が併発することで、咀嚼・発音等の口腔機能障害と、顔貌の審美障害をきたす。口蓋裂を伴うことも多い。現在のところCCDの原因の多くはRunx2遺伝子の変異であることが知られている。一方で、鑑別診断が必要となる全く別の遺伝子突然変異がCCDと類似した症状を発症する報告も存在し、その病態は依然として未解明の部分が多い。 核内転写因子であるRunx遺伝子ファミリー(Runx/Cbfb)は、Runx 1~3とその共役因子であるCbfbからなり、造血、骨形成、発癌などに重要な役割を持つことが知られている。我々のグループではRunx/Cbfbが顎顔面における様々な器官発生に重要な役割を果たすことを見出してきた。本研究ではさらに詳細な頭蓋顔面部の形成におけるCbfbの役割を解析するとともに、CCDおよび頭蓋顔面奇形の原因として、Runx/Cbfbの関与を解析する。 顎顔面形成において上皮とは別に、重要な役割を果たすのが、神経堤細胞である。そこで本研究では、神経堤細胞におけるRunx/Cbfbが顎顔面発生に果たす役割を詳細に解析するため、神経堤細胞由来領域において、Cbfbを不活化させたマウス(Wnt1Cre;Cbfbfl/fl)を作成した。その結果、頭蓋顔面部には、頭蓋骨形成異常、口蓋裂、小下顎が生じることが分かった。このことはCCDにおける泉門閉鎖不全や中顔面低形成、口蓋裂等の症状が、神経堤細胞におけるRunx/Cbfbの機能不全と深く関わることを、強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子変異マウス飼育環境の問題により、変異マウスの供給が十分であるとはいえない状況であったため、変異マウスの形態学的解析に留まり、遺伝子発現解析等の分子生物学的解析が予定通りに進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
目的の遺伝子変異マウス作成のためのコロニーを確立させる。組織学的解析に加え、分子生物学的解析を行う。胎生期の遺伝子改変マウスおよび野生型マウスの各組織・器官を摘出し、動物間で、発現の増減がみられる分子を同定する。微細組織の切り出しにはレーザーマイクロダイセクション法を用いる。発現分子の変動はまず、マイクロアレイ解析にてスクリーニングを行い、詳細はReal time RT-PCR法を用いて確認する。必要に応じて、同定された分子の発現パターンを各マウスの組織を用いてin situ hybridization法にて確認する。 引き続いて、器官培養の手法を用いて、上記で得られた分子のインヒビターを培養系に添加することにより、遺伝子改変マウスにみられた表現型が再現できるかどうかを確認する。同様の手法を用いて、変異マウスの形成異常がみられる器官が上記で得られた分子を添加することでレスキューできるかどうかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に購入を予定していた物品のうち、納期が年度内に間に合わない物があったため購入を一旦キャンセルし次年度に購入することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度の助成金と合わせて、本研究に必要な物品の購入費用に充てる。
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