研究課題/領域番号 |
15K20592
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
五藤 紀子 広島大学, 大学病院, 歯科診療医 (10735137)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 骨分化 / 象牙芽細胞分化 / 脂質代謝 / DNAマイクロアレイ |
研究実績の概要 |
1、骨分化/象牙芽細胞分化に関与するMSX1標的遺伝子の絞り込み (1)、MSX1をノックダウンした細胞とコントロール細胞において骨分化/象牙芽細胞分化誘導した後、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子変動を網羅的に解析した。これらの遺伝子群の特徴を探求するために、1.5倍以上変動した遺伝子についてGO解析を行った。誘導後、MSX1ノックダウンで発現低下した遺伝子群のGOタームには発生や分化に関するGOタームが多くみられ、発現が上昇した遺伝子群においては脂質代謝に関するGOタームが多くみられた。ゆえに、歯髄幹細胞において、骨分化/象牙芽細胞分化誘導時にはMSX1は発生/分化に関する遺伝子の発現を促進し、脂質代謝に関与する遺伝子の発現を抑制していることがわかった。次に、pathway解析を行った。この解析でもGO解析と同様に、発現低下した遺伝子群のpathwayは発生や分化に関与し、発現上昇した遺伝子群のpathwayは脂質代謝に関与していた。つまり、MSX1は発生/分化に関与するpathwayを誘導し、脂質代謝に関与するpathwayを抑制していた。 (2)、以前明らかにしたChIP-seq法とマイクロアレイ法で絞り込んだMSX1表的候補遺伝子の中で、骨分化/象牙芽細胞分化誘導した後、変動した遺伝子群を探したのだが、ほとんど一致しなかった。遺伝子変動は、未分化と分化誘導後では異なることがわかった。 2、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイにより、MSX1標的遺伝子のプロモーター領域へのMSX1の結合の有無を調べた。ChIP-seq法とマイクロアレイ法で絞り込んだMSX1表的候補遺伝子の中で骨分化/象牙芽細胞分化に深く関与しているMET、GREM2、LBH、WNT2、RBPJに注目、選出して実験を行った。MSX1がこの5遺伝子のプロモーター領域に結合することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1、当初の計画では、以前明らかにしたChIP-seq法とマイクロアレイ法で絞り込んだMSX1表的候補遺伝子の中で、骨分化/象牙芽細胞分化誘導した後、DNAマイクロアレイで変動した遺伝子を重ね合わせて絞り込む予定であったが、遺伝子がほとんど一致せず、遺伝子変動は、未分化と分化誘導後では異なっていた。予想外ではあるが、骨分化/象牙芽細胞分化誘導した後のGO解析、pathway解析にてMSX1は発生/分化に関与する遺伝子群を誘導し、脂質代謝に関与する遺伝子群を抑制していることがわかった。よって、計画とは方向性がずれているが、左記の解析も進めていきたい。 2、本課題の研究者が産休のため2015年7月~2015年10月まで研究を中断していたため、計画が滞った。
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今後の研究の推進方策 |
歯髄幹細胞において、骨分化/象牙芽細胞分化誘導した後のマイクロアレイ解析によりMSX1が発生/分化に関与する遺伝子群を誘導し、脂質代謝に関与する遺伝子群を抑制していることがわかった。MSX1が誘導後には脂質代謝に関与する遺伝子を標的としていることも考えられる。未分化時と分化誘導時では標的とする遺伝子が異なることが示唆されている。今後は、分化誘導後の脂質代謝関連遺伝子のプロモーター領域へのMSX1の結合の有無をChIPアッセイにより調べる。未分化時と分化誘導後の遺伝子変動の違いを明確にし、なぜ違う遺伝子群が変化しているのかを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の研究者が産休のため2015年7月~2015年10月まで研究を中断していたため、計画が滞ったため、予算の使用も少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
骨分化/象牙芽細胞分化誘導した後の解析にてMSX1は発生/分化に関与する遺伝子群を誘導し、脂質代謝に関与する遺伝子群を抑制していることがわかった。MSX1が誘導後に脂質代謝関連遺伝子を標的にしていることの注目して今後の研究をすすめていく。具体的には、MSX1標的遺伝子のプロモーター領域へMSX1が結合しているかどうかをクロマチン免疫沈降法(ChIP)アッセイにより確認する。また、MSX1をノックダウンおよび過剰発現させた歯髄幹細胞を用いてリアルタイムRT-PCRによりMSX1表的遺伝子の発現変化を確認する。また、同細胞で脂肪分化させて、MSX1が脂肪分化に与える影響を解析する。
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