研究課題
歯根吸収は矯正歯科治療による副作用のうち、最も高頻度に認められるにも関わらず、発生機序の詳細は不明である。歯根吸収のリスク因子は報告されているものの、現在のところ、消極的な対症療法しか存在しない。エナメル蛋白の主要成分であるアメロゲニンは、近年、エナメル質形成のみならず、歯周組織を構成する様々な細胞に対しても生理活性を有することが多く報告されている。しかしながら、その強い極性から生理的条件下では凝集し、安定的で効率のよい効果を得ることが難しい。そこで、アメロゲニンの安定した効果を引き出すために、その活性部位を探索した。近年血小板を濃縮した多血小板血漿(Platelet Rich Plasma:PRP)を再生療法に応用する試みが盛んに行われている。しかしながら、その効果や詳細なメカニズムは未だ解明されていない。本研究では、主要なエナメル蛋白であるアメロゲニンの活性作用を有する新規の機能性ペプチドを作製し、歯周組織の代謝調節機構に及ぼす影響について明らかにするとともに、歯根吸収抑制効果について検証する。また、PRPが歯周組織代謝に及ぼす影響について解明する。さらに、アメロゲニンペプチドとPRPを活用することにより、矯正歯科治療中の歯根吸収の発症を予防する新規治療法を確立することを最終的な目的とした。平成27年度では、機能性アメロゲニンペプチドおよびPRPの歯根吸収抑制効果の検討とシグナル伝達経路に関する検討を行った。上記の研究結果は8th International orthodontic congress(London)にて発表を行うとともに、Journal of periodontologyにて論文投稿を行った。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、歯周組織に対する機能性アメロゲニンペプチドおよびPRPの影響を解明し、歯根吸収を積極的に予防する治療法を確立することを目的とした計画を立案している。これまでの研究により、アメロゲニンのC末端側にアメロゲニンの活性部位が存在することが明らかとなり、その活性部位を含む機能性アメロゲニンペプチドを開発した。平成27年度では、その機能性アメロゲニンペプチドをセメント芽細胞および破歯細胞に添加し、細胞増殖能および基質産生能の評価を行い、また、それぞれのシグナル伝達経路についての検討を行う予定であったが、概ね順調に進展している。
平成27年度では、各細胞に対する機能性アメロゲニンペプチドの効果を明らかとすることができた。また、セメント芽細胞の細胞増殖では、MAPK経路が関与することが明らかとなった。平成28年度では基質産生におけるシグナル伝達経路の解明、および、in vivoでの実験を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of periodontology
巻: 4 ページ: 1-20
10.1902/jop.2016.150507
Journal of periodontal research
巻: 4 ページ: 1-7
10.1111/jre.12384