涙腺・唾液腺を標的とするシェーグレン症候群は、閉経期以降の女性に好発する自己免疫疾患であり、閉経期前後のエストロゲン産生量の変化が免疫システムの破たんをきたすことで、自己免疫疾患の発症に関与していると考えられてきた。しかし、特定の臓器が自己免疫反応の標的となる詳細な分子メカニズムについては不明のままである。本研究では、エストロゲン欠乏による肥満状態を示し、唾液腺にシェーグレン症候群様の炎症性病変が報告されているアロマターゼ遺伝子欠損(ArKO)マウスを用いて、アロマターゼ欠損によるエストロゲン欠乏状態と、それによる肥満が、涙腺・唾液腺にシェーグレン症候群病変を引き起こす詳細な分子メカニズムについて明らかにすることを目的とした。 研究結果としては、ArKOマウスのシェーグレン症候群様病変について、分子生物学的・病理組織学的手法を用いて、詳細な病態解析を行い、ArKOマウスの涙腺・唾液腺でシェーグレン症候群様病変が増悪する原因解明のために、ArKOマウスの骨髄細胞マクロファージの機能解析と、ArKOマウス脂肪細胞と健常マウス骨髄細胞から分化させたマクロファージを共培養し、ArKOマウスの脂肪細胞がマクロファージに及ぼす影響についての解析を行った。また、健常マウスおよびシェーグレン症候群モデルマウスにアロマターゼインヒビター(AI)を投与し、アロマターゼの欠損が脂肪組織、および涙腺・唾液腺に及ぼす影響について解析を行い、アロマターゼの欠損とMCP-1の発現亢進の関連性について検討を加えた。
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