研究課題/領域番号 |
15K20598
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
近藤 好夫 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (30581954)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 感染性心内膜炎 / レンサ球菌 |
研究実績の概要 |
感染性心内膜炎は心内膜に疣贅(血栓と細菌の塊)を形成し全身性の炎症を生じることから、多彩な症状を呈する疾患である。本疾患の原因菌は主に口腔由来のビリダンスレンサ球菌と指摘されているが、その関与については不明な点が多い。本研究では心内膜炎病巣部より分離されたStreptococcus oralis を用いて、非病原性株とのゲノム比較や宿主への影響を分子生物学的に解析し、発症メカニズムを検討する。まず本菌の病原性を検証するために、生化学的性状について解析を行ったところ、本菌はある細胞外基質に対し、非常に強い親和性を持つことが明らかになった。このことから、本菌の表面タンパクについて詳しく解析する必要性が示唆された。これまで行ってきた本菌の全ゲノム解読ではギャップが複数箇所残っていた。前述の通りギャップをなくし、全ゲノム解読することが望まれたため、まずはギャップクロージングに取りかかった。はじめにprimer walking法を行ったが、解析は不可能であった。そこですでにわかっている配列からプライマーを設計し、クローニングを行なった。これをベクター内に挿入しのちにサンガーシークンス解析を試みたが、解読が困難であった。一方で、ギャップの前後領域や得られたシークエンスの結果から、ギャップ内は繰り返し配列であることが予測された。そのため、Henikoffの方法およびYanisch-Perronらの方法に準じて、ギャップ領域を含むライブラリーを作成しシークエンスを試みたが、これも解読が困難であった。そこで、PacBio RSIIを用いたロンングリード解析を行なったところ、ギャップがない全ゲノム配列を得ることができた。このように、解読はきわめて難渋したが、完全長のゲノム情報を得ることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後の解析を行うにあたり本菌の全ゲノム配列を知る必要がある。また表面タンパクの場合は繰り返し配列を持つものが多く存在するため、繰り返し配列を含む完全長のゲノム配列を得ることが望まれた。本年度はさまざまなアプローチからギャップがない完全長のゲノム情報を得ることができ、今後の解析の進展が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
ミスリードの可能性が高い箇所については、再解析の必要性について検討する必要があり、必要と判断された箇所についてはあらためてシークエンスを行う。その後、アノテーション作業を行ない、データベース登録を行う。2011年に非病原性であるS. oralis Uo5株の全ゲノム情報が公開されているため、保有する遺伝子の違いを比較する。現在、我々が解析を行っている病原株と前述の非病原株間でdot plot解析を行い、大きく異なる領域を6カ所同定した。そのなかでも308株がファージ由来の外来遺伝子を多数保有している領域が1カ所存在していることを明らかにした。しかし、このほかの部位についてもさらなる検討が必要である。病原遺伝子の探索に際してはin vitroの結果も参考に進め、病原遺伝子の獲得機構について考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ロングリード解析が想定していたよりも低予算でできたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
解析用ソフトのアップグレードし、作業の効率化をはかる。
|