研究課題
感染性心内膜炎は心内膜に疣贅を形成し全身性の炎症を生じることから、多彩な症状を呈する疾患である。本疾患の原因菌は主に口腔由来のビリダンスレンサ球菌と指摘されているが、その関与については不明な点が多い。本研究では心内膜炎病巣部より分離されたStreptococcus oralis NS308株を用いて、非病原性株とのゲノム比較や宿主への影響を分子生物学的に解析し、発症メカニズムを検討する。昨年度は次世代シークエンサーを用いたロングリード解析を行ったところ、完全長のゲノム配列を得ることができた。ミスリードの部位を検出するために、これまでに得られていたショートリード解析の結果との重ね合わせを行ったところ、8箇所のエラーを検出した。エラーとしては7箇所がinsertion/delで、1箇所がmismatchであった。エラー箇所の修正をしたのちに、得られた全ゲノム配列にてアノテーションを行ったところ1828個のCDS、62個のtRNA、4個のrRNAオペロンと1箇所のCRISPRを含んでいた。これまでに全ゲノム配列が公開されているS. oralis Uo5株とNS308株を比較すると、アライメント比較ではゲノムアレンジメントはみられなかった。しかし、average nucleotide identityは90.8%であり、通常、同菌株間では95%以上の相同性を認めることから、NS308株はS. oralisの亜種の可能性が示唆された。より詳細に検討するために、両株間で保有する遺伝子の違いを検討したところ、NS308株では1488個(81.4%)のCDSが共通であった。一方でNS308株に特異的なCDSは340個あり、それらのうち69個はファージなどの外来遺伝子であることが明らかになり、これらの病原性への関与について今後の検討を要する。
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Genome Annoucements
巻: 4 ページ: e01349-16
doi: 10.1128/genomeA.01349-16.
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