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2016 年度 実施状況報告書

矯正治療期間短縮のための骨リモデリングを含めた長期的な歯の移動予測システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 15K20600
研究機関長崎大学

研究代表者

富永 淳也  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (30565362)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード骨リモデリング速度の定量化 / 高精度3次元変位測定システム / 有限要素法 / マイクロCT / 光学式3次元形状計測装置
研究実績の概要

本研究の目的は、矯正歯科治療の最大の欠点である長い治療期間を短縮するために、治療結果を正確に推定することが可能な、骨改造現象(骨リモデリング)を考慮した長期的な歯の移動予測システムを構築することである。治療開始前に、どのような矯正治療メカニクスを用いれば、どういった結果となるかを正確に予測できれば、その目標に向かって最短で治療を終了することができる。つまり、本研究目的が達成されれば、EBMとして有効であり、通常は2~3年以上にも及ぶ矯正治療期間の大幅な短縮が期待できる。これにより、患者の精神的・経済的負担が軽減され、治療中のエナメル質脱灰や、う蝕・歯周病に罹患・進行するリスクも著しく低減される。ひいては、矯正治療の需要拡大にもつながり、今後増加するであろう成人矯正治療のニーズにも幅広く対応でき、高齢化社会における口腔保健に大きく寄与すると考える。
この目的を達成するため、研究計画では、まず、高精度3次元変位測定システムを用い、様々な大きさの力を加えた際の歯の初期変位動態を口腔内で実測し、有限要素法における初期変位解析の妥当性を検討し、次に、マイクロCTを用いたラットの実験から得られる、加えた力の大きさと歯の移動速度との相関関係から骨リモデリング速度を定量化する。この結果を、さらに有限要素法による解析に組み込み、骨リモデリングを考慮した長期的な歯の移動動態を解析していく。最終的には、これによって求められた解析結果の妥当性を、光学式3次元形状計測装置により得られる治療前後の歯の移動動態と比較検討し、治療結果を正確に推定できる長期的な歯の移動予測システムを構築することとした。このうち、マイクロCTを用いたラットの実験から骨リモデリング速度を定量化するところまでは現在進行中であるが、それを応用し、長期的な歯の移動予測システムを構築する過程にはまだ至っていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

まず、マイクロCTを用いたラットの実験から得られる、加えた力の大きさと歯の移動速度との相関関係から骨リモデリング速度を定量化する過程においては、ラットの歯は非常に小さいため、その有限要素モデルを構築する段階で、非常に時間を有し苦慮した。さらに実際には、歯根上の任意の点における応力値と、その点の移動量から骨リモデリング速度を定量化するという作業が必要で、無数にある歯根膜上の点からこれを求めることにおいても、また、その解析手法や複数の歯を用いた検証等に試行錯誤を繰り返さなくてはならず、この結果として、これを有限要素法による解析に組み込み、骨リモデリングを考慮した長期的な歯の移動動態の解析を行うには至っていない。最終的には、これによって求められた解析結果の妥当性を、光学式3次元形状計測装置により得られる治療前後の歯の移動動態と比較検討し、治療結果を正確に推定できる長期的な歯の移動予測システムを構築する予定であるが、まだまだ時間を要するものと思われる。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況に記載したように、マイクロCTを用いたラットの実験から骨リモデリング速度を定量化するところまでは現在進行中であるが、それを応用し、長期的な歯の移動予測システムを構築する過程にはまだ至っていない。また最終的には、これによって求められた解析結果の妥当性を、光学式3次元形状計測装置により得られる治療前後の歯の移動動態と比較検討し、治療結果を正確に推定できる長期的な歯の移動予測システムを構築する予定であるが、まだまだ時間を要するものと思われる。そのため、応募ファイルの計画通りに進まない時の対応と、効率的に研究を進めるための研究協力者からの支援の欄にも示しているが、代表者が2011年から2013年まで客員研究員として在籍していた、共同研究を展開中のドイツ・ボン大学と連携を取る必要があると考える。この大学の Oralmedizinische Technologie 講座は、OMSS(Orthodontische Mess- und Simulations-System)と呼ばれる、矯正治療時の様々な歯の移動動態の解析が可能なシステムを保有しており、これにより算出される結果と比較検討を行い、問題点を抽出していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

本研究の目的は、矯正歯科治療の最大の欠点である長い治療期間を短縮するために、治療結果を正確に推定することが可能な、骨リモデリングを考慮した長期的な歯の移動予測システムを構築することであるが、解析の過程において歯根の部位により異なるリモデリング速度である可能性が示唆されたため、歯槽骨の様々な部位について解析する必要性が生じ、その結果実験遂行に時間を要したため、補助事業期間の延長の必要性が生じた。

次年度使用額の使用計画

本研究を行うために必要な設備のうち、矯正治療中の歯列模型の3次元計測装置やラットのマイクロCTを撮影するための設備については当大学の動物実験施設に完備しているので必要はない。また、歯の初期変位動態の測定に使う際のシステムについても研究室内にあるが、それを行う際に使用する消耗部品等については必要となってくる。
有限要素解析を行う際のソフトウェアおよび、この解析を行うためのモデル作成に使用するソフトウェアについては継続して使用する必要があるためため、契約更新を行っていく必要がある。また、記憶装置・電子メディアについては有限要素解析を1回行うごとに1GB以上のデータが出力されることから必要となる。さらに、有限要素解析を行う際や生体測定法に関する技術・手法の情報収集が必要であること、研究成果の発表や報告のために使用する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Types of tooth movement, bodily or tipping, do not affect the displacement of the tooth’s center of resistance but do affect the alveolar bone resorption.2017

    • 著者名/発表者名
      Kondo T, Hotokezaka H, Hamanaka R, Hashimoto M, Nakano-Tajima T, Arita K, Kurohama T, Ino A, Tominaga J, Yoshida N
    • 雑誌名

      Angle Orthod

      巻: 87 ページ: 563-569

    • DOI

      10.2319/110416-794.1

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Development of a numerical simulation model for long-term orthodontic tooth movement with contact boundary conditions using the finite element method.2017

    • 著者名/発表者名
      Hamanaka R, Yamaoka S, Nguyen Anh T, Tominaga J, Koga Y, Yoshida N
    • 雑誌名

      Am J Orthod Dentofacial Orthop

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Innovative design of closing loops producing an optimal force system applicable in the 0.022-in bracket slot system.2016

    • 著者名/発表者名
      Sumi M, Koga Y, Tominaga J, Hamanaka R, Ozaki H, Chiang PC, Yoshida N
    • 雑誌名

      Am J Orthod Dentofacial Orthop

      巻: 150 ページ: 968-978

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Effect of a compensating curve on controlled movement of the anterior teeth in sliding mechanics -Simulation for long-term tooth movement using finite element method-2017

    • 著者名/発表者名
      Hamanaka R, Yamaoka S, Tominaga J, Koga Y, Yoshida N.
    • 学会等名
      2017 AAO
    • 発表場所
      サンディエゴ(米国)
    • 年月日
      2017-04-21 – 2017-04-25
    • 国際学会
  • [学会発表] 矯正力による歯の移動ラットモデルを用いた歯根膜応力値と骨リモデリング量の相関2017

    • 著者名/発表者名
      山岡 智,濱中 僚,Nguyen Anh Tuan,橋本 恵,富永淳也,古賀義之,吉田教明
    • 学会等名
      第12回九州矯正歯科学会
    • 発表場所
      New Wel City 宮崎(宮崎県・宮崎市)
    • 年月日
      2017-03-18
    • 招待講演
  • [学会発表] 抜歯空隙閉鎖時におけるワイヤー結紮方法がトルクロスに与える影響‐有限要素法による経時的な移動動態解析‐2017

    • 著者名/発表者名
      濱中 僚,Nguyen Anh Tuan,山岡 智,富永淳也,古賀義之,吉田教明
    • 学会等名
      第12回九州矯正歯科学会
    • 発表場所
      New Wel City 宮崎(宮崎県・宮崎市)
    • 年月日
      2017-03-18
    • 招待講演
  • [学会発表] 歯根膜応力と骨リモデリングの相関‐ラットモデルを用いた有限要素解析‐2016

    • 著者名/発表者名
      山岡 智,濱中 僚,Nguyen Anh Tuan,橋本 恵,富永淳也,古賀義之,吉田教明
    • 学会等名
      第24回顎顔面バイオメカニクス学会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学 駿河台キャンパス(東京都・文京区)
    • 年月日
      2016-11-21 – 2016-11-22
  • [学会発表] 骨密度と骨リモデリング量の相関‐ラットモデルを用いた骨形態計測‐2016

    • 著者名/発表者名
      濱中 僚,山岡 智,富永淳也,古賀義之,吉田教明
    • 学会等名
      第24回顎顔面バイオメカニクス学会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学 駿河台キャンパス(東京都・文京区)
    • 年月日
      2016-11-21 – 2016-11-22
  • [学会発表] 前歯のen masse retractionにおける最適なコンペンセーティングカーブの大きさの検討2016

    • 著者名/発表者名
      濱中 僚,山岡 智,住 真由美,尾崎博弥,富永淳也,古賀義之,吉田教明
    • 学会等名
      第75回日本矯正歯科学会
    • 発表場所
      アスティ徳島(徳島県・徳島市)
    • 年月日
      2016-11-09
    • 招待講演
  • [学会発表] 大臼歯遠心移動メカニクスを用いた大臼歯移動動態の評価-三次元歯列模型形状計測装置を用いて-2016

    • 著者名/発表者名
      六反田裕美,尾崎博弥,富永淳也,藤村裕治,古賀義之,池上富雄,吉田教明
    • 学会等名
      第75回日本矯正歯科学会
    • 発表場所
      アスティ徳島(徳島県・徳島市)
    • 年月日
      2016-11-07 – 2016-11-09
  • [学会発表] 傾斜移動と歯体移動における抵抗中心の移動量と歯槽骨吸収量の解析-ラットを用いた動物実験モデルでの解析-2016

    • 著者名/発表者名
      近藤崇伸,佛坂斉祉,富永淳也,橋本 恵,田島昂子,有田光太郎,黒濱武士,井野愛理,濱中 僚,吉田教明
    • 学会等名
      第75回日本矯正歯科学会
    • 発表場所
      アスティ徳島(徳島県・徳島市)
    • 年月日
      2016-11-07 – 2016-11-09
  • [学会発表] Analysis of force on brackets generated by NiTi archwires in leveling phase using FEM2016

    • 著者名/発表者名
      Tuan NA,Hamanaka R,Yamaoka S,Sumi M,Ozaki H,Tominaga J,Koga Y,Yoshida N
    • 学会等名
      第75回日本矯正歯科学会
    • 発表場所
      アスティ徳島(徳島県・徳島市)
    • 年月日
      2016-11-07 – 2016-11-09
  • [備考] 長崎大学矯正歯科学講座 業績一覧

    • URL

      http://ortho.dh.nagasaki-u.ac.jp/achievements/2015.html

  • [備考] 長崎大学 研究者総覧データベース 研究者詳細情報

    • URL

      https://hyoka.jimu.nagasaki-u.ac.jp/IST?ISTActId=FINDJPDetail&ISTKidoKbn=&ISTErrorChkKbn=&ISTFormSetKbn=&ISTTokenChkKbn=&userId=100000440

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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