研究実績の概要 |
歯周炎は歯周病原細菌による感染症であるが、その影響は口腔内局所のみにとどまらず、動脈硬化性疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、リウマチ等の重篤な全身疾患のリスクファクターであることが多くの疫学調査及び動物実験によって明らかにされている。 ビタミンDは、骨の恒常性維持に関わる栄養素である。近年、高脂血症、高血圧などメタボリックシンドロームに加え、動脈硬化性疾患や自己免疫疾患に対し抑制的な効果を示すことが報告されている。これは、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞にもビタミンD受容体(VDR)が発現し、これらの細胞の分化、増殖、活性化などを変化させることによるもので、ビタミンDが自然免疫、獲得免疫の両面に作用することが明らかとなってきた。 本研究では歯周病原細菌感染に対するビタミンDの抗炎症、抗菌的作用を明らかとすることを目的とする。 H28年度は、昨年度に引き続き、歯周病原細菌感染に対するビタミンDの抗炎症作用について、in vitroの実験系における解析を行った。マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞及びヒト単球由来THP-1細胞に対し、P. gingivalis LPSを用いて刺激を行い、活性型ビタミンD 1,25(OH)2D3添加による抗炎症作用を検証した。炎症性サイトカインTNF-α, IL-6の遺伝子をReal-time PCR法、及びタンパク発現についてはELISA法を用いて解析を行った。遺伝子、タンパクともにLPS刺激において炎症性サイトカインレベルは上昇したが、ビタミンD添加による有意な抑制効果は認められなかった。また、ビタミンDのレセプターであるVDRの発現量の変化の解析を行った。
|