研究課題/領域番号 |
15K20624
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
守下 昌輝 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60710522)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | AIM / 慢性歯周炎 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
歯周炎と動脈硬化における病態の相似性に着目し、動脈硬化巣でマクロファージから産生される新規タンパク質 Apoptosis Inhibitor of Macrophage (AIM)が、歯周炎における臨床マーカーとなる可能性、さらに歯周炎に罹患した歯周組織から産生されるAIMが動脈硬化性疾患の増悪因子となる可能性を明らかにすることを目的に研究を行っている。本研究はヒトを対象に行う実験を含むことから、九州歯科大学研究倫理委員会から承認を受けている(承認番号14-10)。平成27年度は、健常者、肥満者、九州歯科大学附属病院を受診した広汎型慢性歯周炎患者及び、肥満を有する広汎型慢性歯周炎患者を被験者とし、歯肉溝滲出液、血液、唾液をサンプルとして採取した。サンプル採取は、歯周基本治療のステージ毎(初診時・スケーリング後、スケーリング・ルートプレーニング後)に行った。サンプル中のAIM濃度をELISAにて測定した。その結果、全ての被験者の唾液からは、AIMが検出できなかった。血液及び歯肉溝滲出液では、AIMを検出することができた。血清中のAIM濃度は、歯周病患者、肥満者で高値であり、一部の健常者でも高値を認めた。歯肉溝滲出液中のAIM濃度は、血清と同様に歯周病患者、肥満者で高値であり、一部の健常者でも高値を認めた。肥満を有する広汎型慢性歯周炎患者は現在1名のみで、同様に高値であった。歯周基本治療のステージ毎の変化については、血清では治療ステージが進むにつれて、AIM濃度は減少傾向を示したが、歯肉溝滲出液では減少傾向を認めなかった。歯肉溝滲出液は治療ステージが進むにつれ、液量そのものが減少することから、AIM濃度が減少傾向を示さない可能性があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者、肥満者については比較的容易にサンプル採取が可能であった。初診患者として来院する広汎型慢性歯周炎患者は、選択基準を満たし、かつ研究に同意する者からしかサンプル採取ができないことから、現状は予定人数に達していない。広汎型慢性歯周炎患者のサンプル採取は順次行っているところであるが、特に肥満を有する広汎型慢性歯周炎患者の来院が極めて少ないことから、他群に比べてサンプル数が少ないのが現状である。データの信頼性を高めるために、平成28年度も各群のサンプル採取を継続して、実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
細菌が産生するリポ多糖による刺激を受け、ヒト由来マクロファージTHP-1(ヒト単球マクロファージ細胞株)がAIMを産生するかについて検討する。細菌由来のリポ多糖でTHP-1を刺激し、刺激後の培養上清中のAIMを、ELISAキットを用いて検討する。また、リポ多糖を産生する歯周病原細菌の種類によるAIM産生の違いについても検討する。さらに同一の歯周病原細菌の株によってAIM産生に変化があるかについても検討を行う。 歯周組織中ではマクロファージと歯周病原細菌が相互に関係し、歯周炎を形成している。そのため、マクロファージと歯周病原細菌の生菌の共培養環境におけるAIM産生を検討する。ヒト由来マクロファージと歯周病原細菌Aggregatibacter actinomycetemcomitansやPorphyromonas gingivalisと共培養を行い、培養上清中に産生されたAIMをELISAキットで検出し、検討を行う。 さらに並行して、被験者から引き続きサンプル採取を実施する予定である。
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