動脈硬化巣でマクロファージが産生する新規タンパク質 AIMが、歯周炎の臨床マーカーとなる可能性や、歯周炎の歯周組織が産生するAIMが動脈硬化性疾患の増悪因子となる可能性を解明するために実施した。ヒトを対象に行う実験も含むため、九州歯科大学研究倫理委員会の承認を受けた(承認番号14-10)。 アテローム性動脈硬化症は高血圧症等のみならず歯周病でも惹起されることが知られ、炎症反応が血管内皮細胞の細胞間接着を障害し、血中の単球が血管内膜に侵入し泡沫化して発症する。この過程でTh17細胞が分泌するIL-17Aが細胞接着因子の発現に関与する可能性が示唆されている。 そこで、細胞接着因子に対しIL-17Aがどう作用するかを解明するため、ヒト臍帯静脈内皮細胞株HUVECに、IL-17Aで刺激し、接着因子であるICAM-1、VCAM-1、P-selectin、E-selectinについてRT-PCR法、Western blot法で解析した。また単球の接着因子同定のため、ヒト単球様細胞株U937も同様に刺激しVLA-4、LFA-1、Mac-1、L-selectinも解析した。HUVECではICAM-1、VCAM-1、E-selectinで濃度依存的な遺伝子発現上昇を確認し、U937も、VLA-4、LFA-1、Mac-1、L-selectinの遺伝子発現亢進を確認した。なお、PMA処理でマクロファージへ分化誘導を行ったU937で同様に検討したが、接着因子の明らかな発現上昇を認めなかった。 IL-17Aは血管内皮細胞と単球の両者に作用し、細胞接着因子の発現上昇を誘導し、動脈硬化の発症・進行に関与することが示唆された。 今後、IL-17Aが誘導する単球と血管内皮細胞の接着因子が誘導するシグナル伝達が単球のrollingやstickingおよび血管壁への遊走、AIMの産生にどのように関与するかを解析する予定である。
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