研究実績の概要 |
肥満は,高血圧・脂質異常症・糖尿病など様々な疾患の誘因となり,その過程で脂肪組織の産生する生理活性物質(アディポカイン)の関与が考えられている.歯周病においても肥満はリスクファクターであると考えられている.しかし,歯周病とアディポカインの関与については不明な点が多い.本研究は新規のアディポカインであるapelinに着目し,健常者,歯周病患者をさらに肥満者,非肥満者に分類し,その血清,歯肉溝浸出液(GCF)中のapelin濃度を測定することにより,肥満,歯周病病態におけるその役割を解明すること,さらに,歯周病細菌由来LPS(Lypopolysaccharide)によって誘発される炎症に対するapelinの抗炎症作用を検証し,分子生物学的手法によりその分子基盤を解明することを目的としている. 2016年度は前年度に続き,被験者を募り,その血清及びGCF中のIL-1β,IL-6,TNF-α,apelin,resisitin,adiponectinの濃度を測定した.また,マウスマクロファージ様細胞株J774.1細胞を用い,歯周病細菌であるPorphyromonas gingivalis由来のLSPに対するapelinの抗炎症作用をPCR及びELISAにて検証した. 血清中のapelin濃度は歯周病,肥満を有する歯周病患者において,健常者よりもわずかに低い値を示し,GCF中のapelin濃度は肥満者,歯周病患者,肥満を有する歯周病患者において,健常者よりも低い値を示した. J774.1細胞において,apelinはP.gingivalis由来のLPSによって誘導される炎症性サイトカインの発現を抑制した. 以上よりapelinはP.gingivalis由来のLPSが誘導する炎症に対し抑制的に働き,肥満者におけるGCF中のapelin濃度の低下は歯周病を悪化させうることが示唆された.
|