我々は昨年度、骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞・初代培養骨芽細胞において、アセト酢酸(AA)とb-ヒドロキシ酪酸(HB)がモノカルボン酸トランスポーター(MCT)を介して細胞内に取り込まれ、濃度依存的・時間依存的にアルカリホスファターゼ(ALP)活性と石灰化物形成を上昇・抑制していることを見出した。しかし、そのメカニズムは未だ不明である。そこで本年度は、AAとHBのALP活性・石灰化物形成調整の機序の解析とその影響が骨芽細胞特異的な作用なのか調べていくこととした。 AAとHBのALP活性に影響するシグナルとして、Gタンパク質共役受容体(GPR)が挙げられる。HBがGPRのサブタイプであるGPR41の活性を阻害すること、GPR41はMAPKシグナルを活性化することが報告されているため、AA・HB添加時のALP活性変化に関連していると仮定し、解析を行った。AAとHBはGPR41の発現を変化させなかった。AAとHBのALP活性変化のシグナルは不明のままである。 次に、AAとHBの影響は骨芽細胞に特異的なものなのか調べるために、軟骨芽細胞様細胞ATDC5細胞と破骨細胞様細胞RAW細胞培養時にAAもしくはHBを培地に添加し、その影響を解析した。培養後、ATDC5細胞はルシアンブルー染色とALP活性測定、RAW細胞はTRAP染色・pit assay・トルイジンブルー染色・ローダミン染色を行い、影響を調べた。ATDC5細胞とRAW細胞はAAとHBを添加しても有意な変化はみられなかった。このことから、AAとHBは骨芽細胞特異的に作用することがわかった。
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