研究課題
歯肉接合上皮は,歯面とヘミデスモゾームで結合し,いわば体外と歯周組織内への入り口を担うバリアーである。慢性歯周炎時にはこの付着が破壊されるため,この付着のコントロールが重要である。我々は以前,歯肉接合上皮に局在するアメロチン(AMTN)遺伝子に着目し,炎症時ヒト歯肉におけるAMTN遺伝子発現が,正常歯肉と比較して増加することを示した。炎症の過程や程度は,アポトーシス,上皮間葉移行といった病態と密接に関連している。そこで今回,歯肉上皮細胞にトランスフォーミング成長因子(TGF-β1)を作用させてアポトーシスを引き起こし,AMTN遺伝子発現の変化とその転写調節機構を解析した。歯肉上皮細胞(GE1細胞)をTGFβ1で刺激,またはSmad3過剰発現下で,AMTN mRNA量の変化をReal-time PCRで分析し,マウスAMTN遺伝子プロモーター配列を含むルシフェーラーゼプラスミドを使用して,転写活性を測定した。Smad3応答配列(SBE)とSmad3の結合はクロマチン免疫沈降法で検索した。Smad3ノックアウトマウスにおけるAMTNの局在は免疫染色法で観察した。TGFβ1刺激後およびSmad3過剰発現下でアポトーシスは誘導された。AMTN mRNA量は,TGFβ1刺激24時間で最大になり,その後減少した。TGFβ1刺激およびSmad3過剰発現によるAMTN遺伝子の転写活性には,-1651~-878塩基対に存在する応答配列が関係し,その領域に含まれるSBEへのSmad3の結合が増加した。Smad3ノックアウトマウスの接合上皮におけるAMTNタンパク質発現は減少傾向であった。歯肉上皮細胞のTGFβ1誘導アポトーシス時にAMTN遺伝子発現はSmad3を介し,一過性に増加した。したがって,歯肉上皮のアポトーシスと歯肉接合上皮の病態の変化は深く関与することが考えられた。
すべて 2016
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Odontology
巻: - ページ: -
10.1007/s10266-016-0277-y
Apoptosis
巻: 21 ページ: 1057-1070
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