歯周組織は,歯肉,歯根膜,セメント質および歯槽骨から構成され、歯根膜に存在する幹細胞は骨芽細胞、軟骨細胞、筋芽細胞および脂肪細胞に分化する。また、特異的な転写因子(TFs)は、異なる性質の細胞に幹細胞を分化させるために必要である。そのため,TFsの発現をコントロールする事で,ターゲット細胞を異なる性質の細胞に分化誘導できる可能性が考えられる。そこで我々は、歯周組織構成細胞に発現している転写因子のmRNAおよびタンパク質量の検索を行うことで、歯周組織構成細胞で重要な転写因子の検索を行った。ヒト骨肉腫細胞由来骨芽細胞様細胞(Saos2)をαMEM培地、ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)およびヒト歯根膜線維芽細胞(HPDL)をDMEM培地で培養し、細胞を回収後、間葉細胞関連転写因子mRNAを検索した。さらにsiRNAを用いて歯周組織構成細胞で優位な転写因子の発現を抑制後、細胞を回収し、同様な転写因子mRNA量およびタンパク質量の変化を検索した。Saos2に比べて歯周組織構成細胞(特にHGFおよびHPDL)で、Twist2およびKLF12が重要な転写因子であると考えられた。siRNAを用いた結果から、HPDLでTwist2を抑制すると、軟骨細胞で重要であるSox5 mRNAおよびタンパク質量を増加させ、KLF12を抑制すると、間葉系幹細胞で重要なKLF4およびSox2 mRNAおよびタンパク質量を増加させた。以上の結果から、Twist2を抑制するとHPDLを軟骨細胞、KLF12を抑制するとHPDLを間葉系幹細胞に誘導する可能性が示唆された。
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