平成27年度に実施した地域在住高齢者における健康調査事業で得られたデータをもとに、口腔保健行動における自己効力感に影響を与える因子の検討を行った。その結果、自己効力感に関連する因子の一つとして、主観的口腔健康感が挙げられた。しかしながら、これまでの先行研究で用いられている口腔健康感に関する評価尺度は、4件法による単一の質問項目によるものであり、口腔の健康を多面的にとらえることは困難であった。 そこで、平成29年度は、主観的口腔健康感を簡便に評価できる尺度の開発および信頼性・妥当性の評価を行った。来場型健診を受診した65歳以上の地域在住高齢者761名を対象とした。独自に作成した5件法からなる主観的口腔健康評価尺度(Subjective oral-health Scale: 以下、SOHS)、外的基準妥当性を評価するため口腔関連QOL尺度(GOHAI)について自記式にて回答を求めた。また、再テスト法により信頼性を検討する目的で、健診終了後1か月後に、受診者よりランダム抽出した369名に郵送でSOHS質問票を郵送し、342名より回答を得た(回収率92.7%)。 主成分分析の結果、それぞれの質問項目の負荷量は、「人との会話」(0.735)、「気分の安寧」(0.733)、「外出頻度」(0.683)、「食事の楽しみ」(0.746)であり、累積寄与率は72.4%であった。GOHAI得点と有意な相関(r=0.706)を認めた。また、Cronbach のα係数は0.866で高値を示し、再テスト法でも有意な相関(r=0.628)を認めた。すべての質問について8割以上が、質問は答えやすいと回答したことから、SOHSは、高い信頼性と妥当性を有し、その有用性が示唆された。
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