研究実績の概要 |
高齢者においては、認知症のBPSD(行動・心理症状)としての抑うつ症状が注目されており、うつと認知症を併発するケースも多く存在する。そのため、今回はメタボリックシンドローム有病者における、残存歯の本数と抑うつ状態についての解析を行った。 研究対象集団は魚沼地区に居住する65歳~102歳の国民健康保険集団健診受診者の中から、すべての解析項目について欠値のない男女2,250名とした。対象者を、メタボリックシンドローム該当者+予備群434名(それぞれ275名、159名)、非該当者1329名の2群、残存歯は19本以下689名と、20本以上1,074名の2群に分けて解析を行った。抑うつ状態については、質問紙において、自己効力感についての質問4項目、信頼感についての質問3項目、心と体の健康状態については質問10項目の合計点を2分位し、それぞれ高評価群と低評価群に層別した。 メタボリックシンドローム非該当者とそれ以外の者に分け、残存歯数と自己効力感、信頼感、心と体の健康状態との関連を、ロジスティック回帰分析を用いて評価した。共変量として、高齢者の抑うつ状態に影響を与えるとされる、年齢、性別、喫煙、過去1か月間の睡眠状態、体の健康状態、収入、学歴、生きがいを用いた。解析の結果、メタボリックシンドローム非該当者においては、残存歯と自己効力感、信頼感、心と体の健康状態との関連は見られなかったが、予備群および該当者においては、残存歯19本以下である場合、残存歯が20本以上ある場合と比較して、心と体の健康状態が有意に悪いという結果であった(調整済オッズ比〔95%信頼区間〕=1.77〔1.17-2.69〕)。自己効力感、信頼感については、クロス集計では有意差を認めたものの、ロジスティック回帰分析においては有意な関連が認められなかった。
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