研究課題/領域番号 |
15K20643
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 信和 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (20570295)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者 / 嚥下機能 / 廃用 / 嚥下頻度 |
研究実績の概要 |
高齢者の嚥下障害に関与するサルコペニアは、加齢だけでなく廃用により修飾される。嚥下機能の廃用は、嚥下関連器官を動かす頻度、つまり嚥下頻度の影響をうけると考えられる。我々は先行研究にて、要介護高齢者の嚥下頻度が健常成人と比べ減少していることを明らかにし、嚥下関連筋のサルコペニアが嚥下頻度の減少により生じる可能性を示した。しかしながら、高齢者の経管栄養症例や嚥下障害症例の日常の嚥下頻度、ならびに嚥下訓練の介入による嚥下頻度の変化は明らかではない。そこで本年度は、嚥下障害や経口摂取の有無などの条件での嚥下頻度を測定し、各症例における日常の嚥下頻度の指標を確立することを目的とした研究を行った。 具体的に本年度に実施した研究は、療養型病院に入院中の高齢者のなかから、必要栄養量を全量経口にて摂取している者(経口摂取群:11名、平均年齢76±4.7歳)と全量経管栄養にて摂取している者(経管栄養群:11名、平均年齢74±10歳)を被験者として入院生活中の嚥下頻度を測定し、2群間で比較した。嚥下頻度の測定は1時間とし、測定中に経口摂取を禁止する以外は特に制限は設けなかった。測定の結果、各群の1時間あたりの嚥下頻度は、経口摂取群:平均27.5±14.0回、中央値22回、経管栄養群:平均10.8±8.8回、中央値9回となり、経管栄養群は経口摂取群と比較し有意に嚥下頻度が少ないことが明らかとなった(p<0.01)。 この結果は、経口摂取の有無が日常の嚥下頻度に影響を与える可能性があることを示しており、「口から食事を摂る」という日常生活の中で定期的に嚥下運動を生じさせる行為が嚥下機能の維持に重要であることを示唆するものであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
経口摂取の有無など様々な条件を設定し、その条件の違いによる嚥下頻度の比較を行うためには、可能なかぎり測定条件(測定時間、周囲の環境など)が統一されている方が好ましいと考え、本年度は測定を1施設に限定して実施した。そのため、想定していた以上に被験者として該当する症例が少なく、被験者の選定に難渋した。なかでも、長期療養中の経管栄養症例は1施設内では人数が限られおり、目標とする症例数に到達することが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初計画した通り、①嚥下障害や経口摂取の有無などの条件での嚥下頻度を測定し、各症例における日常の嚥下頻度の指標を確立する、②嚥下訓練による介入前後での嚥下頻度の変化を調査し、その効果を検討する、以上の2点を目的として研究を推進していく予定である。 ①については、引き続き被験者を増やし測定を継続していく。また経管栄養症例だけでなく唾液分泌量や胃食道逆流のなどが嚥下頻度に及ぼす影響も検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた書籍が絶版となり、購入が不可能となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、研究を進めていく過程で必要となる資料や書籍などの購入を予定している。
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