研究実績の概要 |
本年度は、口腔のHPV感染のリスク因子を特定することを目的に、社会経済的状況を考慮した上で、どういった生活習慣や口腔の健康が口腔のHPV感染と関連するのかを検証した。 対象は平成24年度の久山町生活習慣病予防健診を受診した40-69歳の成人から各年代別に層別化無作為抽出した574名(男性269名、女性305名)とした。はじめに、昨年度に引き続いて対象者の唾液検体から既に抽出済みの微生物群集DNAを用いて、先行研究で推奨される反応条件の下で各検体のE6とE7を含む遺伝子領域をPCR法にて増幅を行った。その際、悪性型(HPV 16, 18, 31, 35, 52bおよび58型)をターゲットとし、HPVpU-1MとHPVpU-2Rの2種のコンセンサスプライマーを用いた。PCR法の結果、25検体から悪性型HPVの増幅が確認された。 悪性型HPVの感染を従属変数に、先行研究からリスク因子の疑いのある社会経済的状態や生活習慣、口腔の健康に関する項目を独立変数として同時投入したロジスティック回帰分析を行った。その結果、悪性型HPV感染のオッズはプラークスコアの値が1未満の者に比べて1以上の者が3.49倍(95%信頼区間 = 1.24-9.81)有意に高いことが明らかとなった。他の項目は有意差を認めなかった。 本研究から、社会経済的状況を考慮した上で、口腔の健康指標の中でも特にプラークスコアの値が悪性型HPVの感染のリスク因子となる可能性が示唆された。
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